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SO短編集

第1章 Password

【智side】


オイラはいつも、目が覚めるところから始まる夢を見てる。
眠りを境に、アッチの世界と、コッチの世界を行き来する。







「リーダー、そろそろ時間だよ」

誰かの声がして、意識が浮上した。
えっと、ここはどっち?

「リーダー?」

りーだぁ……。
ってことは、えーっと、テレビに出る人をやってる世界?

目を開ける、けど、状況の把握に時間がかかる。

「ん~……」

声を出してみた。
うん、体には大体収まってる。
多分。

オイラ、起動に時間がかかるの。
アッチでまた、メンテナンスしてもらわないと。
でも、次元が違うから、馴染むまで時間がかかる。
行ったり来たり、してるから。

「リーダー、大丈夫?」

この声、知ってる。
ストレートの茶髪。
背が高くて、痩せてて。
わんこみたいな丸い目。
動物が好きで、優しい人。
無邪気で、素直で。
正直で、嘘がつけない人。

けど、名前、出て来ない。

わかんないから、また目を閉じた。
ああ、また、体から抜けちゃうかな……。

「あ~、また寝ちゃうよ
翔ちゃ~ん、翔ちゃん、どこぉ~
リーダーが起きない~」

遠くから、別の人の声がする。

「寝かしてやれば?
 まだ、時間あるでしょ」

この声も、知ってる。
ちっちゃい頃、可愛かった子だ。
大人になったら、外国人みたいに彫が深くなった。
ハンサムで王冠が似合う人。
甘えたくても、甘えられない子。
オイラが、出来ない人になってやらないと。
この子が叱れるように。

けど、名前、出て来ない。


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