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夜の影

第3章 First kiss

【智side】


ほんとにラーメンでも食いに行こうかと思ったんだけど、万が一、ショウが戻ってきたときにニンニク臭いのはまずい、と気がついて諦めた。

ちぇ。
ラーメン食うのにも気を遣うなんてアホらしい。

まぁ、いいや。
1時間の我慢だ。

1時間経ったら、仕方ないから社長のところに行って、新人の仕事は俺が代わりに行く、って言うだけ。

言うだけ、なんだけど。

アイツの顔をまた見るのかと思うと、考えただけでげんなりする。





「カズ、酒ちょうだい」

一人で戻った俺が事務所に入るなり言ったから、カズは呆れた顔で口を開けた。

「逃げられたんですか?」

「うん」

言って、ソファに横になると、無言のままPCデスクの前から動かない。

「…………」

「なんだよ」

「逃がしたんじゃないでしょうね
アナタ、情にもろいところがあるから」

「…………。
後でアイツのとこに行かなきゃない
素面じゃやってらんないよ
何か酒あるだろ」

スマホを取り出して操作しながら、目を合わせないで言う。
カズは一つ溜息を吐くと、黙ってキッチンへ向かった。

しばらくして、クラッシュアイスを入れたブランデーを出してくれたから、スマホでゲームをしながら時間つぶしに飲む。

ヘネシーね。
アイツ好みの酒だな。

カズがPCのキーボードを叩く音が気持ち良くて、俺はどうやら、スマホを握ったままで寝落ちしたらしい。

毛布を掛けてくれたのを感じて、それを顔まで引き上げたら、インターフォンが鳴った。

「嘘だろ」

言ったのは俺じゃない。
カズだ。





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