夜の影
第15章 孤高の人
【智side】
マツオカさんは、まるで触れた手が切れたみたいな仕草で、自分の右手を左手でギュッと押さえてて。
恐る恐るもう一度アイツの躰に手を伸ばした刹那、漏 ら し た 声。
「嗚呼…
しゃちょう…?
ノリユキさん…?
ノリユ…
嘘でしょ…?
だって、まだ
まだもう少し時間はあるって
ノリユキさんっ!!」
俺とアイツに二人だけの時間があったように、マツオカさんにもアイツと二人だけの時間があって。
カズだって、それは同じで。
立ち入ったらいけないと思ったから、俺は馬鹿みたいに突っ立ったままで泣いてた。
ただ立ち尽くして。
マツオカさんの 慟 哭 を聞いて。
俺たちは三人とも、迷子になってしまったんだな、って。
邪魔しないように、自分の泣き声が零れないように、必死に息を詰めながら、ぼんやり思ってた。
どれくらいの時間が経ったのか。
マツオカさんが 抱 き しめてたアイツの躰を離すと、反対側のドアへ向かう。
「智っ、車に乗れっ
カズはまだ息がある
一旦、ウエクサ先生のとこに連れて行く
智っ、早くしろっ
置いて行かれたいのかっ!!」
怒鳴りつけられて、ようやく我に返って、俺は車まで走って行くと助手席に乗り込んだ。
マツオカさんは、まるで触れた手が切れたみたいな仕草で、自分の右手を左手でギュッと押さえてて。
恐る恐るもう一度アイツの躰に手を伸ばした刹那、漏 ら し た 声。
「嗚呼…
しゃちょう…?
ノリユキさん…?
ノリユ…
嘘でしょ…?
だって、まだ
まだもう少し時間はあるって
ノリユキさんっ!!」
俺とアイツに二人だけの時間があったように、マツオカさんにもアイツと二人だけの時間があって。
カズだって、それは同じで。
立ち入ったらいけないと思ったから、俺は馬鹿みたいに突っ立ったままで泣いてた。
ただ立ち尽くして。
マツオカさんの 慟 哭 を聞いて。
俺たちは三人とも、迷子になってしまったんだな、って。
邪魔しないように、自分の泣き声が零れないように、必死に息を詰めながら、ぼんやり思ってた。
どれくらいの時間が経ったのか。
マツオカさんが 抱 き しめてたアイツの躰を離すと、反対側のドアへ向かう。
「智っ、車に乗れっ
カズはまだ息がある
一旦、ウエクサ先生のとこに連れて行く
智っ、早くしろっ
置いて行かれたいのかっ!!」
怒鳴りつけられて、ようやく我に返って、俺は車まで走って行くと助手席に乗り込んだ。