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夜の影

第16章 明日の記憶

【翔side】



「翔ちゃん、ホントに一人で大丈夫?」



エプロンをかけたままキッチンから出て来た相葉君が、俺を見て心配そうに声をかけてきた。

両手に一枚ずつ、出来立てのチャーハンが乗った皿を持ってる。

いい匂い、と思ったけど、正直、食欲はあまりなかった。

小さな子供じゃないんだから、別に一人でも平気なのに、と思いながら、そう口に出すことも出来ずに、困って笑った。

俺があまり喋らないから、彼は気を遣っていろいろと話しかけてくれてる。

面倒をかけてしまって申し訳ないとは思ってるし、気を遣わせてる、ってわかってるんだけど。

何だかあれから言葉が上手く出て来ない。



ほんの短い間だったのに、サトシと一緒に居た時の感覚が消えなくて。

言葉が要らなかったのは、サトシがいつも俺の気持ちを読取ってくれて、俺が居心地良く居られるように気遣ってくれてたからなんだって。

離れてからわかった。



「……じゃ、
夜ご飯には少し早いけど食べよっか」



相葉君が一生懸命明るくしようとして笑顔で言ってくれてる。

この人も優しい人だな、と思う。



「…ぁりがとう…いただきます…」



喜んで食べられないのが申し訳なくて、頭を下げて言ってみる。

喉に痰が絡んだみたいになって、やっぱり上手く喋れなかった。







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