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夜の影

第16章 明日の記憶

【翔side】



「あ…」



てっきりジョウシマさんは帰って来ないと思ってたから、咄嗟に言葉が出て来なかった。

サトシじゃなくてガッカリしてるのが顔に出てるかもしれない。

隠そうとして俺は慌てて下を向いた。



「…翔君なぁ、
いや…智君も罪作りやな…
社長によう似とるわ(笑)」



しゃがんでいるジョウシマさんの声が、少し上から穏やかな調子で聞こえてきた。

通夜の席で飲んで来たのだろう。
ジョウシマさんからは日本酒の匂いがした。

俺を咎めてるわけじゃないみたいだけど、サトシを待ってたのがバレてしまってバツが悪い。

黙ったまま、俯くしかなかった。



「今は翔君にとって試練の時や
しっかりしい、って言うのが酷なことはわかってる
まだ学生さんなのに、重い現実やな
辛いやろ」

「…………」

「関わった以上、俺も出来る限り応援するし
見捨てたりせえへん
ゆっくりでええから、一人で立てるようになろな?」



だらしなく打ちのめされてる自分が情けない。
柔らかい西の言葉が、余計に沁みた。



「…は、い…ありがとうございます…
あの、お世話になります…」



きちんと言わなくては、と思って、何とかジョウシマさんの顔を見る。

困ったような、呆れたような、でも微笑んでるようにも見える表情だった。

考えてることを見抜かれるような気がして、頭を下げた後、俺はまた、床を見てた。



「通夜の席でなぁ、智君に会うたよ」

「えっ」



現金に顔を上げた俺に、ジョウシマさんは笑って見せてから、靴を脱いで俺の前に胡坐をかいて座り直した。












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