夜の影
第17章 Daylight
【智side】
ショウが事務所を出たと聞いたのは、やっと梅雨も明けたと思われる頃だった。
今年の梅雨は長くて。
アイツの葬式では冷たい雨が降っていた。
どんよりと曇った暗い空と大粒の雨が、かつてアキラと名乗ったことがある全ての参列者の気持ちを代弁しているように思えたものだ。
しっかしまぁ、このピーカンと言ったら。
いつの間にか世の中は夏になってたらしい。
強い日差しに加えて、アスファルトやらビルのガラス、車からの反射で目がチカチカする。
Tシャツ一枚で出てきて正解だったな。
「サト兄、あつい」
街路樹の日影が多い側の歩道を選んで、一緒に並んで歩いてたカズが、俺に文句を言う。
「ん~」
俺はかぶってるキャップを目深に直してから、カズのも調節してやって。
返事をする代わりにそのままカズの頭を撫でた。
「オレ、もう歩きたくない」
まだ5分も歩いてないんだけど、退院して間もないし、体力が戻っていないんだろう。
カズがぐずって足を止めた。
実際、顔色が良くない。
久しぶりに街中に出たから、緊張してるのかもしれない。
「ん~…じゃぁ、ほら」
カズの前にしゃがんで、背中を見せてやった。
「えぇ?おんぶ?」
「ん」
「やだよ、恥ずかしい
タクシーに乗ろうよ」
「ばぁか、もう目と鼻の先なのに
そんな無駄遣いできるか」
「えぇ~、やだ
くっついたらあついだろ」
「お前ねぇ、
いつも自分から俺にくっついてくるくせに何言ってんだ
俺だって暑いんだぞ」
「…………」
返事がないから、しゃがんだまま振り向くとカズが微妙な顔をしてる。
「サト兄…
ホントはオレにくっつかれるの嫌なの?」
言いながら、下を向いてしまった。
俺は内心慌てながら、努めて何でもないみたいな顔を作って、ゆっくり立ち上がった。
ショウが事務所を出たと聞いたのは、やっと梅雨も明けたと思われる頃だった。
今年の梅雨は長くて。
アイツの葬式では冷たい雨が降っていた。
どんよりと曇った暗い空と大粒の雨が、かつてアキラと名乗ったことがある全ての参列者の気持ちを代弁しているように思えたものだ。
しっかしまぁ、このピーカンと言ったら。
いつの間にか世の中は夏になってたらしい。
強い日差しに加えて、アスファルトやらビルのガラス、車からの反射で目がチカチカする。
Tシャツ一枚で出てきて正解だったな。
「サト兄、あつい」
街路樹の日影が多い側の歩道を選んで、一緒に並んで歩いてたカズが、俺に文句を言う。
「ん~」
俺はかぶってるキャップを目深に直してから、カズのも調節してやって。
返事をする代わりにそのままカズの頭を撫でた。
「オレ、もう歩きたくない」
まだ5分も歩いてないんだけど、退院して間もないし、体力が戻っていないんだろう。
カズがぐずって足を止めた。
実際、顔色が良くない。
久しぶりに街中に出たから、緊張してるのかもしれない。
「ん~…じゃぁ、ほら」
カズの前にしゃがんで、背中を見せてやった。
「えぇ?おんぶ?」
「ん」
「やだよ、恥ずかしい
タクシーに乗ろうよ」
「ばぁか、もう目と鼻の先なのに
そんな無駄遣いできるか」
「えぇ~、やだ
くっついたらあついだろ」
「お前ねぇ、
いつも自分から俺にくっついてくるくせに何言ってんだ
俺だって暑いんだぞ」
「…………」
返事がないから、しゃがんだまま振り向くとカズが微妙な顔をしてる。
「サト兄…
ホントはオレにくっつかれるの嫌なの?」
言いながら、下を向いてしまった。
俺は内心慌てながら、努めて何でもないみたいな顔を作って、ゆっくり立ち上がった。