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夜の影

第19章 カズ

【和也side】

ショウに抱きついてたサト兄が、ショウのことを好きだって言った。

ショウも、サト兄が大好き、って。

はぁ~、良かった。

良かったね?

心の中で話しかけたら、もう一人の兄さんが『そうだな』って言って笑った。



病院で目がさめた時からずっと、もう一人の兄さんがオレのそばにいるんだ。

見えないけど。

話しかけると返事してくれる。

兄さんの方から、話しかけてくる時もある。

オレが困ってる時とか、さみしい時に、頭をなでてくれたり、背中や肩に手をおいてくれるんだ。

サト兄のこと、オレのおにいちゃんだよって、教えてくれたのも、見えない方の兄さんだし。

だから、全然こわくない。



サト兄にくっついて寝てると、時々、言ってたの。

ショウ、って。

オレの頭とか、顔をなでてくれてる時に、ショウ、って言ってた。

ショウ、って、だれだっけ?

聞いたことがあるなぁ、と思ってたんだけど。

サト兄のスケッチブックを見たら、絵がかいてあった。

鳥とか、花とかの絵ばっかりなのに、一人だけ人間がかいてあった。



『サトシの特別な相手だよ』



見えない兄さんが教えてくれた。



『もうすぐカズも会える
会ったら、二人が仲良くできるように
助けてやるんだぞ』



オレ、出来るかなぁ、って思ってたんだけど。



『出来るさ
カズはサトシが好きだろう?
ショウに会ったら、
スケッチブックの絵を見せてやればいい』



オレは兄さんの言ってたことを思い出して、床に落ちてたスケッチブックをひろった。

ショウの顔がかいてあるところを開く。

手に持って、サト兄の後ろから、ショウに見せてみた。








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