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夜の影

第21章 おまけ 彼方へ

【智side】

松兄のマンションに翔と二人で戻って来た。

翔にとっては他人の家だから、さっきから遠慮して、背もたれも使わずにちんまりとソファに座ってる。

借りてきた猫だな(笑)。

でも、どこか嬉しそうで、キュッと結んだ唇の両端が上がってる。


ふふっ。

こいつ、嬉しくて、恥ずかしい時って、こういう顔するのか。

表情が豊かだから、見てるだけでも面白い。


「はい、どうぞ」


氷を沢山入れた麦茶を目の前に出したけど、翔はちらっとグラスを見ただけで手を付けようとしない。

くくっ。

思い出してるんだろうな。

初めての時のこと。


「暑いだろ
今エアコン入れたから」


暑いだろ、と言いながら、俺はしれっとして翔の左隣にピッタリくっついて座った。


「ん」


口を開けないで返事をした翔は、組んだ脚の上に置いた手で、膝頭を何度も撫でている。

緊張してるのが丸わかりだ(笑)。


「手」

「ん?」

「手ぇ、かして」


言いながら、翔からは遠い方の左手を差し出すと、翔が右手を伸ばしてくる。

翔の視線が膝に落ちている間に、俺は右腕を翔の肩に回して、更に自分の方へ 抱 き 寄せた。


「あっ」


バランスを崩した翔の躰が、斜めになって俺の方へ傾く。


「あ、あの、俺、汗臭い」

「いいから
俺にも抱きしめさせて」


言って、床に下ろしてた脚をソファに乗せる。

俺の脚の間で翔が半分寝そべってるみたいなかっこうになった。











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