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夜の影

第22章 【過去編】Beginning

【智side】

アラームが鳴ったと同時に、心臓がおかしな具合に脈を飛ばすのを感じて、またか、と気持ちが落ちた。
元は6時にセットしてて一度目が覚めたんだけど、その時も胸がおかしくて。

寝呆けた頭で、これは駄目だ、体調が悪いなと考えて、即座にアラームを掛け直した。

今、二度目の目覚め。時刻は10:00。
起きたくないなぁ、と思いながら仕方なく体を起こした。

「……あーあ……」

今日も学校をサボっちゃったよ。

今から行けば午前中には間に合うけど、それも面倒だなぁ、と考えて、制服でなく私服に着替えた。
2月が悪い。寒いんだもん。

かーちゃんが死んでから学校は休みがちで。きっと今頃あの世で呆れてるだろうなと反省はするんだけどね。

オイラは進学もしないし、取りあえず卒業まであと少し。明日は行こう、と思いながら下にある台所まで降りた。

一人きりの生活に2階建ての家は広すぎる。
石油ストーブに火を入れて、ポットのお湯でインスタントコーヒーを作った。

炬燵に入ってから習慣でテレビをつける。
人の声がないと静かすぎて落ち着かない。
寒くてパーカーのポケットに手を入れたまま、背中を丸めてカフェオレの湯気を眺めていた。

スマホに通知が入る。

『大野くん、お疲れ様です。
早番が一人欠勤しちゃったから、今日もし来られそうなら何時でもいいから連絡もらえないかな?
無理しなくていいので宜しくお願いします(^-^)』

バイト先のコンビニ、店長からのメールだった。
本来なら今日はシフト入ってないんだけど。

学校に行かない正当な理由が出来たな。
人助けなら、かーちゃんも笑って許してくれるだろう。

すぐに電話を入れて今から行きます、と伝えると、ありがとう、助かるよ~~と店長が何度も言ってくれた。

もしもこの日、ちゃんと学校へ行っていたならオイラの人生は変わっていたのだろうか。

バイトに行かなかったら。
欠勤が出なかったら。
店に行ってなかったら、さ。



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