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夜の影

第24章 ヒガシヤマ

二宮カズナリが慌てて言い訳をする。

「ごめんなさい、この前たまたま聞いちゃったんだ。サカモトさんの弟が見つかったんでしょ?
行方不明で外国に売られたみたい、って探してたんだよね?
今度日本に来るから確かめるのに十代の子が必要、って言ってたじゃない」

「カズナリ君、聞いていたのか」

サカモトさんはショックを受けた顔をしていた。

「ずっと探してたのは前から知ってたんだ。
何か、酷い目に遭ってるみたいなんだよね?
助けるんでしょ?」

「カズ」

ヒガシヤマさんが呼んだ。
たった一言なのに『黙れ』と命令しているのがよくわかる。

なんだ。じゃぁ今回の、オイラが手伝うって話は、こいつが叔父さんの了解なく勝手にやったことなのか。

そうオイラは理解したけれど、この叔父さんはさっきからずっと迷惑そうで、どこが優しい人なんだろうか。
ちょっと酷いなと思う。

オイラは部外者だから聞こえない振りをしているしかないけれど。なんだか二宮カズナリが可哀相なくらいだった。

「サカモトさんは、ノリユキ兄さんの大事なパートナーじゃないか。これからも一緒に居てノリユキ兄さんを助けてくれる人だよ。
だから僕、僕だって役に立ちたいんだ」

「カズ」

叔父さんがまた二宮を呼ぶと、慌てたようにサカモトさんが割って入った。

「カズナリ君、もういいよ、有難う。
君の気持ちは十分伝わった。僕の為に有難う。
でも、これは大人の話だから。
社長に任せてあるし、大野君を巻き込むのは間違ってる」

取りなすようにヒガシヤマさんへも声を掛ける。

「社長、二人を送って来ます。
さ、大野君、送って行こう」

サカモトさんがオイラの上着を持ったから、つられて立ち上がろうとした時、二宮カズナリが叫ぶように言った。

「僕がやる!
子供の方が良いんでしょ?
そういう趣味の人なんでしょ?
僕がやる!」

叔父さんがスッと立ち上がった。

あっ。
殴る気だ!

オイラは反射的に体が動いてしまった。

 パンッ!!

気持ち良いくらいの音がして、オイラの体は吹っ飛んでいた。


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