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夜の影

第25章 Child missing

【智side】

ただ、ウチのかーちゃんに言わせると、この日のことは何度も思い出して後悔したそうだ。

公園から帰る時に、かーちゃんは毎回ケン君に「気をつけるのよ」と声を掛けていた。

でも、子供にそう言ったところで、実際には何に気をつければいいのか判断が出来る年じゃない。

刑事さんが思い出したように訪ねて来るたびに、どうしてもっと親身になって気に掛けてやらなかったのか、って悔やんだと言っていた。

オイラも何となく記憶に残ってるんだけど、結構刑事さんは何回もウチに来てたんだ。

時間が経ってから不意に思い出すこともあるから、って忘れた頃に来る感じで。

だから、しばらくの間は捜査を継続してたんだろうけどね。オイラの中ではそこら辺の記憶は曖昧だ。

いつの間にか刑事さんも来なくなって、ケン君がどうなったのか、かーちゃんも聴かされず、その出来事は埋もれてしまった。

多分、あの頃は今と比べると防犯意識もそんなに浸透してなくて、それに、バイアスっていうの? やっぱり自分の身に降りかかる事として本気で考えてはいなかったんだと思う。

小学校低学年の子供を夕方に一人きりで公園に残すなんて、と責められるかもしれないけど……。
今思うとケン君の方が警戒してた気がする。

オイラがケン君ちは両親がいないことをかーちゃんに話したら、公園じゃなくてウチに連れてきて家で遊びなさい、と言われて、確か誘ったこともある筈だ。

だけど大体は遠いから、って言われて断られてたように思う。

他所の家に遊びに行くのはあんまり好きじゃないみたいだな、と思って、オイラもそのうち誘わなくなった。

あれは、きっと親が居る家に行くと羨ましかったり、淋しかったりしたからなんだろうな……。


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