テキストサイズ

夜の影

第26章 in the park

【智side】

「サカモト、悪いが大野君を送ってやってくれ。
少し時間が欲しい」

言うなりヒガシヤマさんが立ち上がる。
スタスタと歩いて廊下へ出ると別の部屋へ行ったようで、ドアが閉まる音が響いた。

「はい」

返事をしたサカモトさんがテーブルに出ていたカップ類を片付け始める。

「サトシ君、荷物まとめて」

言われた内容がピンと来ない。
オイラは動けなくて、ただサカモトさんの動きを目で追っていた。

事と次第はサッパリわからないけれど、多分オイラが思い出したことが何かのヒントになったのは間違いない。
ケン君を探すための手がかりだ。

それってつまり……昨日二宮カズナリが言っていたデートクラブの話に戻るんじゃないか?

『昨日のことは忘れて欲しい』

あ。

頭の中を整理してヒガシヤマさんの言葉をたぐり寄せた。
だから、オイラを送ってやれ、っていうのは、もうこれで関係ないということか。

要は、もう帰れ、って。

「……ちょっと待ってくれよ」

呟きに返事をくれる人は居ない。

嘘だろ?
だって、オイラだって関係者だ。
ここで放り出すって酷くないか?
こんな中途半端に関わってさ。

昨日、二宮は役に立ちたいと言って殴られるところだった。そしてオイラは今、部屋の外に出されようとしてる。

でもでも、だけどオイラにとって腹違いの弟に初めて会ったことも、その弟から突拍子もない頼み事をされたことも、結構な事件だぜ?

言ったら、幼馴染の友達が本当に行方不明だったことも、何かヤバイ目に遭ってて助けなきゃいけないことも、大事件だよ。

てゆうか、教会の人が犯人なら、オイラが攫われててもおかしくなかったんだ。
ある意味ではオイラの代わりにケン君が連れて行かれたようなもんじゃないか。

「サトシ君、もう出られるか? 
行こう。上着は玄関にある。
そうだ、ポケットの中、捨てといたぞ」

普通に何でもなく笑って言うサカモトさんが爽やかで腹が立った。

丸っきり子ども扱いで、必要な情報だけ引き出せたら後はオイラなんて要らないってことか。

「行きません」

「え?」

「僕だって関係者です。追い出されたくない」

驚いた顔のサカモトさんが動きを止めた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ