夜の影
第27章 眠らないカラダ
【和也side】
マンションに着いたのは約束の10分前だった。僕はエントランスで5分、時間を潰すことにする。
ノリユキ兄さんとの約束は時間よりほんの少しだけ早めに到着するように、いつも気をつけていた。
スマホの時刻表示を眺めながらドアホンを鳴らすタイミングを見計らっていると、背後からフルネームで呼ばれる。
「あ、二宮カズナリ。
お疲れ。お前も来たんだな」
「大野さん」
何故フルネーム呼び。
まぁ、別に良いけど。
彼が来るのは知らなかったから驚いてしまう。
お疲れ様、って言うのが、この場合に適切なんだろうか。
ツッコミたかったが、まずはお詫びが先だった。
「この間はすみませんでした」
「何が?」
「あの、打たれたでしょ。ごめんなさい」
あの後サカモトさんに注意されて、自分の行動が各方面に迷惑を掛けていたことを猛省した。
この人にしても僕に言いたいことは細々あることだろう。
「いーよ、気にすんな」
ごく軽い口調で言って、大野さんは来客用のドアホンを操作する。応対に出たサカモトさんに解錠してもらって、僕たちはエレベーターに乗り込んだ。
部屋に上がるとノリユキ兄さんとサカモトさんの二人が居て。この後仕事があるのか、どちらもスーツ姿だった。
ノリユキ兄さんはいつものように、スリーピースのベストを来てジャケットを脱いでいる。
部屋の暖房が程よく効いていて、リビングに通された僕達は脱いだ上着をゴソゴソまとめ、またソファに並んで座った。
「サカモト、お前は居なくていい」
コーヒーを出してくれたサカモトさんに、ノリユキ兄さんが言う。
「……社長」
「…………」
何か酷く困ったような、いたたまれない顔でサカモトさんが言うのに、ノリユキ兄さんは返事をしない。
その様子を見て、何か嫌な事? あまり良くないことが起こるのだと悟った。
サカモトさんは少しの間迷うように黙っていたけれど、静かに部屋を出て行ってしまう。
立ち上がる時にテーブルの上にあったノートパソコンを辛そうな顔でチラリと見ていた。
玄関のドアが完全に閉まった音がした後、ノリユキ兄さんが話を始める。
「今からお前達に見せるものがある」
テーブルの上にあるPCを操作すると、動画が流れ始めた。
マンションに着いたのは約束の10分前だった。僕はエントランスで5分、時間を潰すことにする。
ノリユキ兄さんとの約束は時間よりほんの少しだけ早めに到着するように、いつも気をつけていた。
スマホの時刻表示を眺めながらドアホンを鳴らすタイミングを見計らっていると、背後からフルネームで呼ばれる。
「あ、二宮カズナリ。
お疲れ。お前も来たんだな」
「大野さん」
何故フルネーム呼び。
まぁ、別に良いけど。
彼が来るのは知らなかったから驚いてしまう。
お疲れ様、って言うのが、この場合に適切なんだろうか。
ツッコミたかったが、まずはお詫びが先だった。
「この間はすみませんでした」
「何が?」
「あの、打たれたでしょ。ごめんなさい」
あの後サカモトさんに注意されて、自分の行動が各方面に迷惑を掛けていたことを猛省した。
この人にしても僕に言いたいことは細々あることだろう。
「いーよ、気にすんな」
ごく軽い口調で言って、大野さんは来客用のドアホンを操作する。応対に出たサカモトさんに解錠してもらって、僕たちはエレベーターに乗り込んだ。
部屋に上がるとノリユキ兄さんとサカモトさんの二人が居て。この後仕事があるのか、どちらもスーツ姿だった。
ノリユキ兄さんはいつものように、スリーピースのベストを来てジャケットを脱いでいる。
部屋の暖房が程よく効いていて、リビングに通された僕達は脱いだ上着をゴソゴソまとめ、またソファに並んで座った。
「サカモト、お前は居なくていい」
コーヒーを出してくれたサカモトさんに、ノリユキ兄さんが言う。
「……社長」
「…………」
何か酷く困ったような、いたたまれない顔でサカモトさんが言うのに、ノリユキ兄さんは返事をしない。
その様子を見て、何か嫌な事? あまり良くないことが起こるのだと悟った。
サカモトさんは少しの間迷うように黙っていたけれど、静かに部屋を出て行ってしまう。
立ち上がる時にテーブルの上にあったノートパソコンを辛そうな顔でチラリと見ていた。
玄関のドアが完全に閉まった音がした後、ノリユキ兄さんが話を始める。
「今からお前達に見せるものがある」
テーブルの上にあるPCを操作すると、動画が流れ始めた。