夜の影
第30章 movin' on
【智side】
夢を見ていた。
オイラは子供で、例の公園に一人で居る。
夕焼けが凄くて、辺り一面がオレンジ色に光ってた。もう5時を過ぎているのに、かーちゃんはまだ来ない。
きっと残業なんだな。
そうオイラは思って。
つまらないから隣の教会に行ってみることにした。
ハヤシさんが受付に居る。
挨拶だけして勝手にトイレに行こうとすると、彼が事務室から出て来た。
「サトシ君、今ね、トイレが工事中なんだ」
「えっ、そうなの? どうしよう、オイラもらしちゃう」
子供のオイラはひどく焦る。
「だからね、職員用のトイレを貸してあげるよ。こっちにおいで」
「ホント!? 良かったぁ~」
差し出された手を握った。
ハヤシさんの手は、左手の中指にいつも肌色のテープが巻いてある。
指の根元にいつもしてて、気になってよく見てた。ケガかなあ、全然治らないんだなぁ、って。
連れて行かれた場所は真っ黒いカーテンがある部屋で暗い。臙脂色のソファが一つだけ置いてある。
「サトシ君、あの椅子に座ってごらん」
「え?」
あそこには座ったらいけない。
夢の中で子供のオイラはそう思った。
あれに座ると良くないことが起こる。
だから、ハッキリ断った。
「やだ」
「どうして?
漏れそうなんでしょ? 早く座って」
背中を押された時、急に怖くなって、オイラはハヤシさんからパッと離れた。
舌打ちをした音が聞こえる。
驚いて見上げると、彼はいつもの笑顔を浮かべてた。しゃがみ込んで、オイラと目の高さを合わせる。
「じゃぁ、そこでいいから座って」
言う通りにしないとマズイような不穏な気配を感じて、言われた通りに床に座った。
「寝て」
「え?」
「横になるんだよ」
何か変だなと思いながら、オイラは床に背中をつける。
ハヤシさんが寝てるオイラに近づいて来て、上から覗き込んだ。
異様なものを感じたオイラはゴロッと転がって彼を避け、体を起こした。
「何するの?」
「寝て」
「何でねるの? おかしいよ、ねぇ、なんで?」
「いいから寝るんだ」
子供の目から見てもハヤシさんの顔つきは変だった。口は笑っているのに、目が怖いのだ。
「ほら、早く」
イヤだ! つかまる!! 怖いっ!!
腕が伸びてきたから、慌てて立ち上がって。ダッシュで部屋を出たところで目が覚めた。
夢を見ていた。
オイラは子供で、例の公園に一人で居る。
夕焼けが凄くて、辺り一面がオレンジ色に光ってた。もう5時を過ぎているのに、かーちゃんはまだ来ない。
きっと残業なんだな。
そうオイラは思って。
つまらないから隣の教会に行ってみることにした。
ハヤシさんが受付に居る。
挨拶だけして勝手にトイレに行こうとすると、彼が事務室から出て来た。
「サトシ君、今ね、トイレが工事中なんだ」
「えっ、そうなの? どうしよう、オイラもらしちゃう」
子供のオイラはひどく焦る。
「だからね、職員用のトイレを貸してあげるよ。こっちにおいで」
「ホント!? 良かったぁ~」
差し出された手を握った。
ハヤシさんの手は、左手の中指にいつも肌色のテープが巻いてある。
指の根元にいつもしてて、気になってよく見てた。ケガかなあ、全然治らないんだなぁ、って。
連れて行かれた場所は真っ黒いカーテンがある部屋で暗い。臙脂色のソファが一つだけ置いてある。
「サトシ君、あの椅子に座ってごらん」
「え?」
あそこには座ったらいけない。
夢の中で子供のオイラはそう思った。
あれに座ると良くないことが起こる。
だから、ハッキリ断った。
「やだ」
「どうして?
漏れそうなんでしょ? 早く座って」
背中を押された時、急に怖くなって、オイラはハヤシさんからパッと離れた。
舌打ちをした音が聞こえる。
驚いて見上げると、彼はいつもの笑顔を浮かべてた。しゃがみ込んで、オイラと目の高さを合わせる。
「じゃぁ、そこでいいから座って」
言う通りにしないとマズイような不穏な気配を感じて、言われた通りに床に座った。
「寝て」
「え?」
「横になるんだよ」
何か変だなと思いながら、オイラは床に背中をつける。
ハヤシさんが寝てるオイラに近づいて来て、上から覗き込んだ。
異様なものを感じたオイラはゴロッと転がって彼を避け、体を起こした。
「何するの?」
「寝て」
「何でねるの? おかしいよ、ねぇ、なんで?」
「いいから寝るんだ」
子供の目から見てもハヤシさんの顔つきは変だった。口は笑っているのに、目が怖いのだ。
「ほら、早く」
イヤだ! つかまる!! 怖いっ!!
腕が伸びてきたから、慌てて立ち上がって。ダッシュで部屋を出たところで目が覚めた。