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夜の影

第33章 初会

【智side】

一眠りして目覚めると、熱は36.8度になっていた。平熱よりはちょっと高いけど、気分は悪くない。
これなら中止にならないで済むな、ってオイラはホッとした。

ヒロさんが作ってくれたうどんは美味しかったんだけど、緊張してるのか半分も食べられなかった。

シャワーを浴びて頭をセットしてもらって。用意されていたスーツに着替えたところにヒガシヤマさんが帰って来る。

「見て見てノリ~、この子ったらキレイよねぇ。
ホント王子様みたい。
んも~舐めたくなるわぁ」

「やだよ、やめてね」

すっかり打ち解けたヒロさんとオイラのやり取りには構わず、ヒガシヤマさんはオイラの額に手を当てる。

「調子は?」

「うん、熱下がったよ」

笑って見せるとオイラの顔をじっと見て。
それから、ちゅっ、と唇にキスをした。

「……なんですぐキスするの?」

顔が熱くなるのを感じながら言ったら、澄ました顔で言う。

「挨拶だ」

「じゃ、ヒロさんにもしなよ」

「そうよ、ノリ。
昨日のご褒美ももらってないしぃ」

オイラとヒロさんが二人で言うと、ヒガシヤマさんは無表情でヒロさんを見やる。
それからヒロさんに一歩近づいてオイラにしたように、ちゅっ、って。

あ、ホントにするんだ、と驚いた瞬間に、ヒロさんがヒガシヤマさんの頭を両手で押さえつけて、ぶちゅ~とかました。

離れた時のヒガシヤマさんの顔と言ったら。
物凄く嫌そうな顔をしてて、オイラはゲラゲラ笑ってしまった。

「行ってらっしゃい」

ヒロさんにハグされて、ほっぺたにも「挨拶」されてマンションを出た。外では雨が雪に変わって、小さな白いカケラが風に乗って舞っている。

朝からずっとベッドでぬくぬくしてたから、凄く寒く感じて。

体が震えた。



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