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夜の影

第38章 時代

【剛side】

床に突っ伏して寝息を立て始めた林を眺めながら、笑いが込み上げてきた。

「ふっ……ふふっ……」

これでもう、頭の悪いノロマな助手を演じなくて済む。

「くっ、くはははっ、はははっ!」

突然笑い出した俺に驚いたのか、智が大人しくなった。

「ああ、ごめんごめん、ビックリした?
コイツがあんまり間抜けだから可笑しくって。
あーウケる。くっくっ。
お前は可愛いから、ちゃんとイかせてやるよ」

耳元で言って、そのまま舌を入れた。

「あっ、あぁ……あんっ」

腕の中で熱く燃えている華奢な躰が、実はさっきからずっと俺の欲望を刺激してる。
長年の奴隷のような暮らしから解放された祝いに、このまま頂いてしまってもいいくらいだ。

ここに健が居れば、すぐに抱き合えたのに。

「智、お前誰に抱かれてるんだ? 言ってみろ。
ふふっ、あそこで寝転がってる男はな、陳大人の言うことを真に受けて、お前が男を知らないとばかり思っていたんだぜ。
危なかったなぁ、お前。
うっかり処女だったら、この先どうなっていたか」

耳朶を吸いながら言うと、赤く染まった躰が反り返る。
感度が良い。与えられる快楽を知ってる躰だ。

「あぁ……あ……」

男娼には見えなかったから意外に思っていた。
男が好きなヤツなら視線でわかる。
コイツは男に欲情するタイプじゃないだろうに、何故アキラなんてやってる?

興味が湧いた。

「智、お前の上に乗ってる奴は誰だ?
今お前の中に入って、躰の奥を突いているヤツの名前は?」

「ん、あ、ヒガ、シ、ヤマ、さ……」

「へぇ、そうか。
暁の社長でも抱えてる子に手を付けるんだ。
ふん、どうせそんなことだろうと思った。
お前も攫われて来たのか?」

俺達と同じように。
何も知らない躰に快楽を教え込まれて、金儲けの道具にされるんだ。

「あぁ、も、苦、し……イ、き、た……」

今回が初仕事なら、健や俺とは違ってまだ救いようがある。せっかくだから、コイツも自由にしてやろうか。

「いいよ、うんと気持ち良く出させてやるよ」

憐れみから、自分の声が優しくなるのが解る。
パチンと指を鳴らした。


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