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夜の影

第38章 時代

【剛side】

「俺が今から数を数える。
5から順に下がっていって、ゼロになったら出していい。
ごー……よーん……」

わざとゆっくり、焦らしてカウントをとる。

このぐらいの楽しみはあってもいいだろ、健。
浮気じゃないぞ。

「あぁ……」

「さーん…………」

「あ、イ、ク……」

「にーい…………」

「あっ、は、や、くっ……ううっ……」

ああ、泣いちゃったよ。
かわいーなー。

「いーち………………」

「あっ、あっ、ああっ」

「…………」

黙っていると、腰を前に突き出して、イヤイヤをするように顔を左右に振る。

「んんっ、んっ」

「ふふっ……いーち…………ゼロッ!」

パチンと指を鳴らした。

「ほら出せ!!」

続けてパチパチと鳴らし煽ってやる。

「んんんんっ!!」

歯を食いしばった智が、躰を硬直させて勢いよく飛ばした。

「あぁ……あ、あ……」

ゼェゼェと荒い息を吐いているのが可愛くて、思わずギュッと抱いて頭にキスをした。

あーあ、俺も健とやりてーな。

「……智、健のこと頼むな。
あいつ、浦島太郎だからさ。
後片付けは俺がするから……」

膝の間に納まってる躰をゆらゆら揺らして、あやしながら。健にはもう言えないから、代わりに智に言った。

「教団にとっては俺さえ残れば、もう健に価値は無い。
兄貴と二人で、ひっそり暮らしていくなら大丈夫だ。
林の始末は頼んである、安心しろ。
俺とは多分、もう会えないけど……
捜すなよ……二度と香港へは来るな……」

智をホテルから出してしまえば、後々コイツが怪しまれることもない。
俺が教団と取引したことなんて、林は夢にも思ってないんだからな。

オメデタイ奴だぜ。

林には予定通り、智を港へ送ったと言って。
俺達は香港へ戻る。
それで健は自由だ。

躰を拭いて後始末をしていると、智の呼吸がスーッと長くなった。

「おい、寝るな。お前にはまだ、やってもらうことがあるんだよ」

パチンと指を鳴らした。


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