夜の影
第39章 voice
【健side】
サトシ君に見えないように、正面からではなく、緑のフェンスの継ぎ目から公園に入った。ブランコの前にある背の低い柵に座った彼の、背後に立つ。
「ケン君?」
雪を踏む足音で人が来たことは気がついた筈だけど、サトシ君は振り返らずに声を掛けて来た。
「サトシ君、久しぶり」
「うん、十年以上ぶり……振り向いてもいい?」
その一言で気を遣ってくれたのが解った。
もしかしたらあの動画をサトシ君も見たのかもしれない。
今の自分を見られたくなくて、オレは彼に後ろから目隠しをする。
「手ぇ、冷たいなぁ」
「ふふっ、ごめん」
のんびりした口調が、今の容姿と良く合っていた。
当たり前だけど、もうすっかり大人の声になってて、やんちゃだった子供の頃とは話し方も違う。
それは、きっとオレも同じ。
「ケン君……見つけてあげられなくて、ごめん」
「え?」
「オイラ、あの時ケン君が事件に巻き込まれてるなんて思わなかったんだ。
もっと本気で捜してあげられたら良かったのに。
てっきり家出したんだと思って」
むにゃむにゃ言うのが可愛らしい。
見た目はすっかりキレイ系になってるのに、この、言葉が追いつかなくて困ってる感じ。
中身はやっぱりサトシ君だ。
小さい頃と変わってない。
「ホントにごめん」
辛そうに言うのが意外で驚く。
そんな風に思ってるなんて、別にサトシ君のせいじゃないのに。
「バッカだなぁ、何言ってんの?
サトシ君が謝ることじゃないじゃん。
オレのこと捜してくれたんだ?」
サトシ君は頭を振ってオレが言うことを否定すると、また謝る。
「ごめん……」
「本当に気にしなくていいんだ」
言って目隠しを外し、サトシ君の肩から前に腕を回して抱きしめた。
いつも剛がしてくれるみたいに、ゆらゆらブランコみたいに左右に揺らす。
「見つかるわけないんだよ。
だってオレ、自分からついて行ったんだから」
「えっ?」
「アイツに騙されたんだけどね。
あの頃さ、ほら、オレの方がいつも早く来てたでしょ。
学校近かったからさ。
サトシ君が来るまで一人で居ると、よくアイツが話かけて来てたんだよ。
兄ちゃんがオレのこと施設に入れたいって、教会に相談に来てる、って」
「マジで……」
サトシ君に見えないように、正面からではなく、緑のフェンスの継ぎ目から公園に入った。ブランコの前にある背の低い柵に座った彼の、背後に立つ。
「ケン君?」
雪を踏む足音で人が来たことは気がついた筈だけど、サトシ君は振り返らずに声を掛けて来た。
「サトシ君、久しぶり」
「うん、十年以上ぶり……振り向いてもいい?」
その一言で気を遣ってくれたのが解った。
もしかしたらあの動画をサトシ君も見たのかもしれない。
今の自分を見られたくなくて、オレは彼に後ろから目隠しをする。
「手ぇ、冷たいなぁ」
「ふふっ、ごめん」
のんびりした口調が、今の容姿と良く合っていた。
当たり前だけど、もうすっかり大人の声になってて、やんちゃだった子供の頃とは話し方も違う。
それは、きっとオレも同じ。
「ケン君……見つけてあげられなくて、ごめん」
「え?」
「オイラ、あの時ケン君が事件に巻き込まれてるなんて思わなかったんだ。
もっと本気で捜してあげられたら良かったのに。
てっきり家出したんだと思って」
むにゃむにゃ言うのが可愛らしい。
見た目はすっかりキレイ系になってるのに、この、言葉が追いつかなくて困ってる感じ。
中身はやっぱりサトシ君だ。
小さい頃と変わってない。
「ホントにごめん」
辛そうに言うのが意外で驚く。
そんな風に思ってるなんて、別にサトシ君のせいじゃないのに。
「バッカだなぁ、何言ってんの?
サトシ君が謝ることじゃないじゃん。
オレのこと捜してくれたんだ?」
サトシ君は頭を振ってオレが言うことを否定すると、また謝る。
「ごめん……」
「本当に気にしなくていいんだ」
言って目隠しを外し、サトシ君の肩から前に腕を回して抱きしめた。
いつも剛がしてくれるみたいに、ゆらゆらブランコみたいに左右に揺らす。
「見つかるわけないんだよ。
だってオレ、自分からついて行ったんだから」
「えっ?」
「アイツに騙されたんだけどね。
あの頃さ、ほら、オレの方がいつも早く来てたでしょ。
学校近かったからさ。
サトシ君が来るまで一人で居ると、よくアイツが話かけて来てたんだよ。
兄ちゃんがオレのこと施設に入れたいって、教会に相談に来てる、って」
「マジで……」