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夜の影

第1章 【Season1】Brand new

【智side】

社長は一つ上のフロアに住居用の部屋を持ってて、用がある時は大抵そこへ呼ばれる。

表札は「HIGASHIYAMA」。

本業は 男 娼 の元締め、じゃなくて、一応、実業家。

飲食店をいくつか経営してて、あとは政治家なんかとよく会ってるらしい。

この仕事を始めた頃にしばらく一緒に住んでたけど、未だにその辺のことを俺は解ってない。





どうせ、俺には関係がない話だ。

こちらから縁を切ることが出来ない以上、平和にやっていくためには、とにかく詮索しないことだと学んだ。

短い間でも一緒に暮らして、身に染みてわかったことがある。

アイツときたら整った見た目とは裏腹に、蛇みたいにしつこくて、エ ロくて、冷たい。
おまけに頭が良くて、筋肉自慢で、しかも金もある。

とても今の俺が敵うような相手じゃない。
当たり障りなくしてるのが一番だ。

俺たち玉への連絡は基本的にメールだし、ここにだって滅多に来ないんだ。
来るのは新人と、そのバッチだけ。





カズに渡された鍵を使って部屋に入ると、社長は一人掛けのソファにゆったりと座って新聞を読んでいた。

自宅にいるのに、三つ揃えのスーツを着てる。
似合ってるのが癪に障る。

三人掛けの長い方のソファに、新人らしき若い男がポツンと座ってた。
ソファの背が入口の方を向いてるから、俺から見えるのは後姿で、しかも首から上だけだ。

緩くパーマのかかった、ちょっと長めの黒髪。

俺は黙ったまま二人の近くまで歩いて行くと、そのまま社長の方を向いて突っ立っていた。
こっちから口をきくつもりはない。

「…………」

社長も俺が居ないみたいに無視してる。

会うのは半年ぶりくらい?
相変わらず年齢不明の顔をしてる。

沈黙が面白くなってきて、俺は頭の中で数を数え始める。

秒針のカウントで120まで数えた時、サクライショウがこっちを見上げる気配がしたから、視線だけ投げてやった。












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