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夜の影

第8章 素描

【智side】

アイツが考え出したバッチシステムの実体は、そういうことなんだ。

ショウ、お前が今感じてるのは、俺に対する愛なんかじゃない。

好意でさえない。

ただの勘違いなんだよ。



俺がお前を可愛いと思う事も。

愛しいような気さえ、してることも。

全部、ただの勘違い。



それがわかってて、俺はお前の相手をしてる。

お前が嬉しそうに目を細めるから。

俺も、それに応える。



ショウは一人で体を起こしたけど、動いた途端に痛みで顔をしかめた。
俺は苦笑しながら、スウェットの上下を着せてやる。

どうせ今日は外出は無理だろうし、また後ですぐ脱がせるからパンツは履かせてない。

俺の首に腕を回して何とか立ち上がったショウに、顎で背後を見るように指し示した。

「見てみ」

言いながらズボンを下ろして、可愛い 尻 をペロッと出してやる。

ズボンを下げられたことに驚いたショウが、次の瞬間、鏡を見て更に大きく目を見開く。

自分の 尻 に 蒙 古 斑 みたいに青あざが広がってるのを見て、ショックを受けたみたいだった。



まぁ、最初の時の翌朝、って大体みんな同じ反応だ。
俺も自分の時はびっくりしたしな。

「心配すんな
最初はみんな、こうなる」

不安になったのか、ぎゅっと抱きついてきた。

「男同士で繋がるって
そんなに簡単なことじゃないってこと。
今日は大人しくイイコにしてるんだぞ」

ショウは神妙な顔で頷いた。

ふふ。

可愛い。



カズは大学へ行ってていないから、その後は二人でいちゃいちゃしながら過ごした。

冷凍庫にあったうどんを煮込んで卵を落としたのを作ってやったら、ショウはきれいにそれを平らげて。

熱くて咽ながら、夢中で食べてる顔が可愛かった。



食後に鎮痛剤を飲ませて、嫌がって 躰 を捩るのを無理に 押 さえつけ、後ろに薬を塗ってやって。

ベッドに入れたら、あっと言う間に眠ってしまう。



俺は自分の荷物から、いつも持ち歩いてる小さなスケッチブックを取り出して、こっそりショウの寝顔を描いた。

写し取ったショウに陰影をつけるため、紙を指で擦りながら。

繋 がっていた時に撫でていた、眉や、睫毛、頬の感触を思い出していた。









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