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夜の影

第9章 ショウ

【翔side】

手の平を返したように、態度を変えた友人たち。
付き合っていた彼女とは音信不通になった。

頼ろうとした親戚は、家にやってきて母の話を一通り聞いた後。

蔵にあった価値もわからないような骨董品を持ち出して帰って。

それきり連絡も取れなかった。





気丈に対応していた母が最期に言った言葉。

『お父さんを信じて』

父の足取りを一人で調べようとしてた母は、過労から居眠り運転をして。

事故を起こし、父の後を追った。

通行人を巻き込まなかったことだけが、まだ救いだった。





やめよう。
考えても仕方ない。

父も母も、もういない。
嘆いても仕方ない。

俺は、俺に出来ることをするだけ。





歯を磨きながら、鏡で自分の腫れた顔を見た。

ぶさいく。

昨夜、サトシにいっぱい泣かされたからだ。

サトシに…。





現実には昨日会ったばかりで、友達なんかじゃなかった。

お互いのことを何も知らなくて。
躰 だけ、繋いだ相手。

サトシの方だって…
当然、初対面なんだから、俺に対して何らかの好意を持ってた筈もない。

社長に言われて、渋々引き受けたって感じだった。

なのに優しかった。

今も優しい。





歯を磨きながら、ガラスの折り戸越しにわかる、サトシのぼんやりした影を見つめる。

なんで、優しくしてくれたの?








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