
闇に咲く花~王を愛した少年~
第5章 闇に散る花
「何とやわらかな膚だ。抱き心地もさぞ良かろう。殿下がお前を抱いていないのは、私にとってはむしろ幸いだ。旬の初物の味は、どれほど美味であろうか。任務の成功のために、水揚げの夜はご馳走を食べるのを我慢したというのに、お前は肝心の任務に失敗した。もう、お前を抱くのを躊躇う必要はどこにもない」
思わずゾワリと膚が粟立ち、誠恵は身を震わせた。
「―怖いのか? 香月は、お前は何も知らぬと言った。翠玉よ、これは私を裏切ったお前への見せしめではあるが、安堵するが良い。何も知らぬお前の身体をゆっくりと味わってやろう。何度も抱いて、今度こそ私のことしか考えられぬように―私のためなら、その生命すら投げ出すほど惚れさせてやろうではないか?」
ふいに、尚善の声が危険な艶を帯びる。
「あ―」
誠恵はあまりの怖ろしさに、身を竦ませた。
まさか、こんなことになるとは思ってもみなかった。
香月は、このことを知っていたのだろうか? 尚善が自分を抱くつもりであることを―。
立ち上がり、身を翻そうとしたときには遅かった。後ろから羽交い締めにされた彼は、のしかかってきた尚善の身体に勢いつけて押し倒された。
「姐さんッ、光月姐さんッ、助けて」
誠恵は救いを求めるように手を差しのべる。だが、香月が来る気配はなかった。
両手をその場に縫い止められ、噛みつくように口付けられる。口を固く閉じて拒むと、懲らしめのように唇を強く噛まれた。
「痛―い」
下唇に走る鋭い痛みに、涙が溢れそうになった。
尚善は執拗に唇を重ねてこようとする。首を振って避けながら、誠恵は涙を流した。
首筋に生温かい息がかかり、総毛立つ。
「殿下、国王殿下」
私は、ここにいます。どうか助けて下さい。
心の中の声がつい出てしまったらしい。
耳ざとく聞き取った尚善が唇を歪めた。
「フン、情にほだされて、手を下せぬか? 王に惚れたのか? 所詮、薄汚れた淫売は淫売、使い物にはならぬな」
酷い蔑みの言葉を投げつけられ、あまりの屈辱に涙が止まらなかった。
思わずゾワリと膚が粟立ち、誠恵は身を震わせた。
「―怖いのか? 香月は、お前は何も知らぬと言った。翠玉よ、これは私を裏切ったお前への見せしめではあるが、安堵するが良い。何も知らぬお前の身体をゆっくりと味わってやろう。何度も抱いて、今度こそ私のことしか考えられぬように―私のためなら、その生命すら投げ出すほど惚れさせてやろうではないか?」
ふいに、尚善の声が危険な艶を帯びる。
「あ―」
誠恵はあまりの怖ろしさに、身を竦ませた。
まさか、こんなことになるとは思ってもみなかった。
香月は、このことを知っていたのだろうか? 尚善が自分を抱くつもりであることを―。
立ち上がり、身を翻そうとしたときには遅かった。後ろから羽交い締めにされた彼は、のしかかってきた尚善の身体に勢いつけて押し倒された。
「姐さんッ、光月姐さんッ、助けて」
誠恵は救いを求めるように手を差しのべる。だが、香月が来る気配はなかった。
両手をその場に縫い止められ、噛みつくように口付けられる。口を固く閉じて拒むと、懲らしめのように唇を強く噛まれた。
「痛―い」
下唇に走る鋭い痛みに、涙が溢れそうになった。
尚善は執拗に唇を重ねてこようとする。首を振って避けながら、誠恵は涙を流した。
首筋に生温かい息がかかり、総毛立つ。
「殿下、国王殿下」
私は、ここにいます。どうか助けて下さい。
心の中の声がつい出てしまったらしい。
耳ざとく聞き取った尚善が唇を歪めた。
「フン、情にほだされて、手を下せぬか? 王に惚れたのか? 所詮、薄汚れた淫売は淫売、使い物にはならぬな」
酷い蔑みの言葉を投げつけられ、あまりの屈辱に涙が止まらなかった。
