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闇に咲く花~王を愛した少年~

第5章 闇に散る花

 香月が異母兄の援助に飛びついたのも、何も肉親への情だけではなく、多額の援助によるところが多かったろう。現実として、月華楼は尚善の援助で何とか営業しているようなものだ。
 香月が異母兄の意向に逆らえないことは、誠恵も知っている。だから、泣いて詫びる女将を責めるなどできなかった。
―実の娘のように可愛がったお前を好き者の旦那の餌食にしちまった―。
 泣き崩れる香月に、誠恵は哀しげな微笑みを向けただけだった。
 宮殿に戻った誠恵は趙尚宮に挨拶をすると、逃げるように自室に引き取った。
 今夜はもう、一歩も動けそうにない。あちこち愛撫された跡―身体中が悲鳴を上げ、痛みを訴えている。薄い胸の先端は腫れ上がって充血し、詰め物がほんの少し掠っただけでも痛むし、臀部の奥は何度も深々と刺し貫かれたせいで出血していた。
 布団を敷いて倒れるように横たわると、改めて今日一日の出来事が甦り、涙が溢れた。
 尚善に手籠めにされ続けた間中、泣いていて、もう涙も涸れ果てたと思うほど泣いたのに、まだ涙が出ることが自分でも不思議に思える。
 どうして、御仏は自分にこんな酷い仕打ちをなさるのだろう。自分が何の罪を犯したからといって、あそこまでの辱めを受けねばならない?
 死にたいほど辛かった、恥ずかしかった。
 自分でも見るどころか触ったこともない箇所を容赦なく暴かれ、指や舌先でかき回されたのだ。とりわけ、あの男を初めて迎え入れたときの痛みは言葉に言い尽くせないほどだった―。あまりの衝撃と激痛に涙を振り散らし、跳ねる身体をあの男は容赦なく押さえ込み、自分自身を突き入れた。
 もう、二度とあんな想いはしたくない。
 我が身が女でなくて良かったと思ったのは、これが初めてだった。あれほど何度も交わったのだ、女の身であれば、もしや、あの男の胤を宿してしまったのかもしれないと余計な心配をすることになっただろう。
 あの男が自分の胎内深くに入り込み、何度も精を放ったのだと思い出しただけで、吐き気がしそうだ。あれほどの辱めを受けて、正気でいられる我が身がむしろ不思議だ。
 ああ、このまま息絶えることができたなら、どれほど幸せだろうか。

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