
闇に咲く花~王を愛した少年~
第5章 闇に散る花
「内侍府は常に殿下と密接な拘わりを持ち、殿下の手脚となって動くために存在します。従って、たとえ殿下のご命令がなくとも、殿下のおんためであると判断すれば、独自に動くこともございます」
「つまり、そなたは王命もないのに、勝手に何かを探ってきたということだな」
光宗はプイとそっぽを向いた。
「もう良い。今宵は退がれ。今夜は、これ以上、そなたと話さぬ方が互いのために良さそうだ」
柳内官は取りつく島もない王の態度にも怯まなかった。
「私は、そのようには思いませぬ。殿下、どうか私の衷心よりの言葉に耳をお傾けになって下さいませ」
「衷心だと? 予の気持ちを無視したそなたの言動のどこが衷心だ?」
光宗の烈しいまなざしが柳内官を射るように見据えた。
「殿下、私と監察部長を初め、数人の者たちで張女官について調べて参りました。ここのところ、町に頻繁に出ていたのは、そのためにございます」
「ホホウ、あれほど申したにも拘わらず、そなたは緑花を科人扱いするのだな」
光宗はそれ以上聞きたくもないと露骨に態度で示す。大抵の者ならば、国王の逆鱗に触れるのを怖れて、ここで引き下がる。だが、柳内官は違った。
「殿下、まずは私をお叱りになる前に、こちらをご覧下さい」
張緑花について調べた結果は、既に上がってきている。それらを逐一詳細に記した文書を柳内官は持参していた。
巻物状の紙に記された報告書を差し出され、光宗は仕方なく手に取った。
それでも気が進まず手に持ったままなのを、柳内官が急かすように言葉を添える。
「どうぞご確認下さい」
光宗はわざとらしい溜息をつき、何げなく巻物をひろげた。
柳内官は息を詰めて、王の様子を見守る。 やがて、少しく後、王の端整な面が翳った。
しばらく無言で眼を走らせていた光宗は、顔を上げて柳内官を見た。
報告書を持つ手がかすかに揺れている―、震えているのだ。
「ここに書いてあるのは、すべて事実なのか? 十分な証拠が揃っているのか」
「は、すべて入念な調査を行い、証拠も揃っております。内侍府の監察部が特に優秀なことは殿下もご存じのことにござりましょう」
「つまり、そなたは王命もないのに、勝手に何かを探ってきたということだな」
光宗はプイとそっぽを向いた。
「もう良い。今宵は退がれ。今夜は、これ以上、そなたと話さぬ方が互いのために良さそうだ」
柳内官は取りつく島もない王の態度にも怯まなかった。
「私は、そのようには思いませぬ。殿下、どうか私の衷心よりの言葉に耳をお傾けになって下さいませ」
「衷心だと? 予の気持ちを無視したそなたの言動のどこが衷心だ?」
光宗の烈しいまなざしが柳内官を射るように見据えた。
「殿下、私と監察部長を初め、数人の者たちで張女官について調べて参りました。ここのところ、町に頻繁に出ていたのは、そのためにございます」
「ホホウ、あれほど申したにも拘わらず、そなたは緑花を科人扱いするのだな」
光宗はそれ以上聞きたくもないと露骨に態度で示す。大抵の者ならば、国王の逆鱗に触れるのを怖れて、ここで引き下がる。だが、柳内官は違った。
「殿下、まずは私をお叱りになる前に、こちらをご覧下さい」
張緑花について調べた結果は、既に上がってきている。それらを逐一詳細に記した文書を柳内官は持参していた。
巻物状の紙に記された報告書を差し出され、光宗は仕方なく手に取った。
それでも気が進まず手に持ったままなのを、柳内官が急かすように言葉を添える。
「どうぞご確認下さい」
光宗はわざとらしい溜息をつき、何げなく巻物をひろげた。
柳内官は息を詰めて、王の様子を見守る。 やがて、少しく後、王の端整な面が翳った。
しばらく無言で眼を走らせていた光宗は、顔を上げて柳内官を見た。
報告書を持つ手がかすかに揺れている―、震えているのだ。
「ここに書いてあるのは、すべて事実なのか? 十分な証拠が揃っているのか」
「は、すべて入念な調査を行い、証拠も揃っております。内侍府の監察部が特に優秀なことは殿下もご存じのことにござりましょう」
