
闇に咲く花~王を愛した少年~
第5章 闇に散る花
名誉のために断っておくが、光宗に衆道の趣味などさらさらない。緑花を愛していたのは、彼女が女だと信じ込んでいたからだ。
なのに、真実を知った今でも、緑花を抱いただけで、これほどまでに反応する自分の身体が信じられなかった。
普通、男の身体というものは、抱いても固く平板なものではないだろうか。
光宗はむろん、全く女性経験がないというわけではなく、親政を始めてから一、二度、年上の女官を寝所に召したことはある。が、それはあくまでも伯父孔賢明を初めとする大臣たちに強制的に押しつけられた女であった。二人か三人だったと思うが、彼女たちには申し訳ないが、今では顔どころか名前すら憶えていない。
あのとき抱いた女官たちは皆、十六歳の彼よりは数歳年上で、いちばん年の近い女官でも一歳上だった。大臣たちが送り込んできただけであって、いずれもそれなりに美しく、家柄もそれほど悪くはない娘たちで、身体は十分に成熟していた。
女は皆、あのようにふくよかで豊満なはずで、反対に男の身体には、起伏が乏しく固いのではないか。
そう思い込んできた彼ではあるが、腕に抱く緑花の身体は結構やわらかく、弾力がある。
腕に閉じ込めていても、まるで温かな仔猫を抱いているようで気持ちが良い。それが、かえって仇となり、彼は逸る心と身体を抑えるのに苦労しなければならない。
光宗は少なくとも一刻以上は悶々として眠れず、絶えず彼を突き動かそうとする欲望と闘わねばならなかった。眠ろうとすればするほど意識の芯はしんと冷め、その分だけ身体は熱くなる。かなり長い時間に渡って寝付かれぬ時間を過ごした彼は、しかし、知らぬ間に浅い眠りに落ちたようだった―。
誠恵は薄く開いていた眼をゆっくりと開けた。眠っていたふりをしていたので、起きるのはたいして辛くはない。
傍らの光宗は眠っているようだ。王が長い間目ざめたままでいたため、誠恵はなかなか行動に移れず、随分と焦った。
だが、やっと眠ってくれて、ホッとした。とはいえ、すぐに行動に移すのはあまりにも用心がなさすぎるというものだ。誠恵は王が寝入ってからなおしばらくは息を潜め、一刻余りも経ってから起き出したのである。
あまりにも安らいだ表情で眠っている男を、誠恵は無言で眺めた。
なのに、真実を知った今でも、緑花を抱いただけで、これほどまでに反応する自分の身体が信じられなかった。
普通、男の身体というものは、抱いても固く平板なものではないだろうか。
光宗はむろん、全く女性経験がないというわけではなく、親政を始めてから一、二度、年上の女官を寝所に召したことはある。が、それはあくまでも伯父孔賢明を初めとする大臣たちに強制的に押しつけられた女であった。二人か三人だったと思うが、彼女たちには申し訳ないが、今では顔どころか名前すら憶えていない。
あのとき抱いた女官たちは皆、十六歳の彼よりは数歳年上で、いちばん年の近い女官でも一歳上だった。大臣たちが送り込んできただけであって、いずれもそれなりに美しく、家柄もそれほど悪くはない娘たちで、身体は十分に成熟していた。
女は皆、あのようにふくよかで豊満なはずで、反対に男の身体には、起伏が乏しく固いのではないか。
そう思い込んできた彼ではあるが、腕に抱く緑花の身体は結構やわらかく、弾力がある。
腕に閉じ込めていても、まるで温かな仔猫を抱いているようで気持ちが良い。それが、かえって仇となり、彼は逸る心と身体を抑えるのに苦労しなければならない。
光宗は少なくとも一刻以上は悶々として眠れず、絶えず彼を突き動かそうとする欲望と闘わねばならなかった。眠ろうとすればするほど意識の芯はしんと冷め、その分だけ身体は熱くなる。かなり長い時間に渡って寝付かれぬ時間を過ごした彼は、しかし、知らぬ間に浅い眠りに落ちたようだった―。
誠恵は薄く開いていた眼をゆっくりと開けた。眠っていたふりをしていたので、起きるのはたいして辛くはない。
傍らの光宗は眠っているようだ。王が長い間目ざめたままでいたため、誠恵はなかなか行動に移れず、随分と焦った。
だが、やっと眠ってくれて、ホッとした。とはいえ、すぐに行動に移すのはあまりにも用心がなさすぎるというものだ。誠恵は王が寝入ってからなおしばらくは息を潜め、一刻余りも経ってから起き出したのである。
あまりにも安らいだ表情で眠っている男を、誠恵は無言で眺めた。
