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闇に咲く花~王を愛した少年~

第1章 変身

 当然だ、棘で刺せば、血は流れるし、痛みも感じるだろう。果たして、自分にできるのか? 恨んでも憎んでもいない人の生命を奪えるだろうか。
 だが、あの男は怖ろしげではあるが、嘘をつくようには見えなかった。もし自分が任務をやり遂げたなら、家族の暮らしはこの先ずっと保証してやると言ったのだ。
 たとえ相手が聖君と崇められる国王でも、何を躊躇う必要がある? 幾ら情け深い国王であっても、国王が母や弟妹たちを直接救ってくれるわけでもないし、面倒を見てくれるわけでもない。
 良心の痛みなどこの際、きれいさっぱり棄てて、あの男の手先となり、国王の生命を奪えば良いではないか。国王暗殺に失敗すれば、自分の生命はないばかりか、それこそ家族にまで咎が及ばないとも限らない。
 迷っている暇はない。賽は投げられたのだ。始まったからには、この賭けには是非とも勝たなければならない。この計画の成功に、自分と家族の生命がかかっているのだから。
 誠恵は口に指をくわえたまま、じいっと闇の一点を睨み続けていた。

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