
闇に咲く花~王を愛した少年~
第4章 露見
何がどうなっているのか、判らなかった。十で遊廓に売られ、そこで育った誠恵は男娼と客が夜毎褥を共にするのを知っていた。香月は必要以上に誠恵に性的知識を授けようとしなかった。水揚げの夜、何も知らない純真で初な少年を好む客もいるからだ。
ゆえに、誠恵は男女(或は男同士)が褥を共にしても、具体的に何をするのかは理解できていない。
強引に舌を差し入れられ、口の中を蹂躙される。何度となく唇を重ねてきたのに、こんな嫌悪感を催すのは初めてだった。
その間に、大きな手が誠恵の身体中をまさぐる。
漸く、誠恵にも光宗が何をしようとしているのかが判った。
優しかった光宗の笑顔が瞼をよぎり、消えていった。今、力ずくで自分の身体を犯そうとしているのが同じ男だとは思えない。
のしかかってきた光宗の下腹部が腹に当たり、固い怒張したものが触れるのに気付き、誠恵はハッとした。
そのときの誠恵の衝撃と恐怖といったら、この上なかった。光宗が自分と同じ男であるとか、裸にされてしまえば男だとバレる―、そんな意識はどこかに消えていた。
ただ恐怖だけしかなかった。
「いやーっ」
誠恵は力の限りを込めて、両手で男の身体を突いた。思わぬ反撃を受けて、光宗が一瞬怯む。その隙に誠恵は身をすべらせ、逃れた。
部屋を走って横切り、両開きの戸に手をかける。
―怖い、怖い、誰か、助けて。
「いやっ、怖い。来ないで」
背後に迫る気配を感じた誠恵は振り向いて、悲鳴を上げた。血走った眼がぎらついて、自分を射抜いている。以前の誠恵がよく知る穏やかな青年王はどこにもいなかった。
女を暴力で我が物にしようとするしか頭にない、まるで荒れ狂う手負いの獣のようだ。
「国王殿下、お願いでございます。お許し下さいませ、お許し下さい―」
誠恵は涙を堪えきれず、恐怖のあまり、とうとう泣き出した。
「予が怖いだと? 何故、怖いのだ。惚れておるなら、怖いことなどないだろう。国王が抱いてやると申しておるのだ。そなたは後宮の女官であろう。そなたを予が望むからには、そなたは予の意に従わねばならぬ」
怖いと怯える誠恵が余計に光宗の欲情と怒りを煽っていることにも気付かず、誠恵は哀願した。
ゆえに、誠恵は男女(或は男同士)が褥を共にしても、具体的に何をするのかは理解できていない。
強引に舌を差し入れられ、口の中を蹂躙される。何度となく唇を重ねてきたのに、こんな嫌悪感を催すのは初めてだった。
その間に、大きな手が誠恵の身体中をまさぐる。
漸く、誠恵にも光宗が何をしようとしているのかが判った。
優しかった光宗の笑顔が瞼をよぎり、消えていった。今、力ずくで自分の身体を犯そうとしているのが同じ男だとは思えない。
のしかかってきた光宗の下腹部が腹に当たり、固い怒張したものが触れるのに気付き、誠恵はハッとした。
そのときの誠恵の衝撃と恐怖といったら、この上なかった。光宗が自分と同じ男であるとか、裸にされてしまえば男だとバレる―、そんな意識はどこかに消えていた。
ただ恐怖だけしかなかった。
「いやーっ」
誠恵は力の限りを込めて、両手で男の身体を突いた。思わぬ反撃を受けて、光宗が一瞬怯む。その隙に誠恵は身をすべらせ、逃れた。
部屋を走って横切り、両開きの戸に手をかける。
―怖い、怖い、誰か、助けて。
「いやっ、怖い。来ないで」
背後に迫る気配を感じた誠恵は振り向いて、悲鳴を上げた。血走った眼がぎらついて、自分を射抜いている。以前の誠恵がよく知る穏やかな青年王はどこにもいなかった。
女を暴力で我が物にしようとするしか頭にない、まるで荒れ狂う手負いの獣のようだ。
「国王殿下、お願いでございます。お許し下さいませ、お許し下さい―」
誠恵は涙を堪えきれず、恐怖のあまり、とうとう泣き出した。
「予が怖いだと? 何故、怖いのだ。惚れておるなら、怖いことなどないだろう。国王が抱いてやると申しておるのだ。そなたは後宮の女官であろう。そなたを予が望むからには、そなたは予の意に従わねばならぬ」
怖いと怯える誠恵が余計に光宗の欲情と怒りを煽っていることにも気付かず、誠恵は哀願した。
