
闇に咲く花~王を愛した少年~
第4章 露見
「国王殿下のお心を疑ってはなりませんよ。殿下は今もあなたを大切に思っておいででしょう。ただ、あなたは殿下のお心をあまりにも長い間、そのままにしておきすぎました。あなたがどうしても殿下の御意を受け容れられないというのなら、あなたは潔く身を退き、宮殿を去るべきだったのです。お心を受け容れられぬのに、殿下のお目に止まる場所にいるのは、あまりに酷ではありませんか?」
趙尚宮の言葉は、もっともだ。誠恵は自分が光宗に対して取った仕打ちがいかに残酷だったか、初めて知った。
泣きじゃくる誠恵の背を撫でながら、趙尚宮が小声で呟いたのを、誠恵は聞かなかった。
「可哀想に、誰が見ても似合いのご夫婦になるだろうと思うのに、あなたが殿下の御意を受け容れられない、どのような理由があるというのですか―?」
そのとき以来、誠恵の脳裡から趙尚宮の言葉が離れなかった。
―あなたは殿下のお心をあまりにも長い間、そのままにしておきすぎました。あなたがどうしても殿下の御意を受け容れられないというのなら、あなたは潔く身を退き、宮殿を去るべきだったのです。
趙尚宮の言葉は鋭く誠恵の心を突いた。それがあまりにも的を射ていたからだ。
あのときに聞かされた科白が何度も耳奥でこだまし、誠恵の心を苛み、誠恵は我と我が身を責めた。
食欲もめっきりと落ち、沈み込むことの多くなった誠恵を、趙尚宮はいつも気遣わしげに眺めていた。
王に乱暴されそうになったあの事件から数日後、誠恵は一人、殿舎と殿舎の間の広場に佇んでいた。ここは世子誠徳君と初めて出逢った場所でもある。
―あなたがどうしても殿下の御意を受け容れられないというのなら、あなたは潔く身を退き、宮殿を去るべきだったのです。
また、趙尚宮の言葉が甦る。
誠恵は深い吐息をつき、思わず小さく首を振る。
英邁な王も恋をすれば、血気盛んな年頃の若者にすぎなくなる。王をあそこまで追い込んだのは、他ならぬ自分だ。
王の心を弄ぶつもりはなかったけれど、領議政に命じられた〝王の心を虜にして、意のままに操れ〟という命は、結局は同じことだ。
自分は王の心をあんなにも深く傷つけていたのだ。
趙尚宮の言葉は、もっともだ。誠恵は自分が光宗に対して取った仕打ちがいかに残酷だったか、初めて知った。
泣きじゃくる誠恵の背を撫でながら、趙尚宮が小声で呟いたのを、誠恵は聞かなかった。
「可哀想に、誰が見ても似合いのご夫婦になるだろうと思うのに、あなたが殿下の御意を受け容れられない、どのような理由があるというのですか―?」
そのとき以来、誠恵の脳裡から趙尚宮の言葉が離れなかった。
―あなたは殿下のお心をあまりにも長い間、そのままにしておきすぎました。あなたがどうしても殿下の御意を受け容れられないというのなら、あなたは潔く身を退き、宮殿を去るべきだったのです。
趙尚宮の言葉は鋭く誠恵の心を突いた。それがあまりにも的を射ていたからだ。
あのときに聞かされた科白が何度も耳奥でこだまし、誠恵の心を苛み、誠恵は我と我が身を責めた。
食欲もめっきりと落ち、沈み込むことの多くなった誠恵を、趙尚宮はいつも気遣わしげに眺めていた。
王に乱暴されそうになったあの事件から数日後、誠恵は一人、殿舎と殿舎の間の広場に佇んでいた。ここは世子誠徳君と初めて出逢った場所でもある。
―あなたがどうしても殿下の御意を受け容れられないというのなら、あなたは潔く身を退き、宮殿を去るべきだったのです。
また、趙尚宮の言葉が甦る。
誠恵は深い吐息をつき、思わず小さく首を振る。
英邁な王も恋をすれば、血気盛んな年頃の若者にすぎなくなる。王をあそこまで追い込んだのは、他ならぬ自分だ。
王の心を弄ぶつもりはなかったけれど、領議政に命じられた〝王の心を虜にして、意のままに操れ〟という命は、結局は同じことだ。
自分は王の心をあんなにも深く傷つけていたのだ。
