
闇に咲く花~王を愛した少年~
第5章 闇に散る花
幸いにも光宗は〝緑花〟に夢中で、柳内官の言葉よりは〝緑花〟の言葉を信じたようだが、あの件以来、柳内官が自分を見る眼が厳しくなり、隙あらば、その正体を暴こうとしていることは明らかだ。
「ホホウ、その隙のない身のこなしは、ただ者ではないな。到底、一介の女官とは思えない。まるで、刺客のようだ」
意味ありげな笑みを浮かべる柳内官の貌は、夜目にも不気味で凄みがあった。
誠恵はキッとしたまなざしで柳内官を見つめた。
「何が仰りたいのですか?」
柳内官は余裕の表情で腕を組んだ。
「今、大妃殿は上へ下への大騒動だ。何しろ、世子邸下が何者かに首を絞められかけて、あわやご落命なさるところだったのだから」
無言を通す誠恵に、柳内官が誘いかけるように言った。
「張女官は世子邸下のお気に入りだったはずなのに、こんなところで薔薇見物などしていて良いのか? それとも、後ろ暗いところがあって、大妃殿には顔を出せないとでも?」
「柳内官! 言いたいことがあるのなら、はっきり言いなさい。私は殿下の恩寵を賜っている身です。無礼な態度は許しません」
胸をそらして言ってやると、柳内官は鼻を鳴らし、皮肉げに口の端を歪めた。実直な務めぶりで知られる柳内官でも、このような表情をするのかと内心、誠恵は愕いた。
「そなたは、殿下の寵愛を受けていない。殿下がそなたには甘いのを良いことに、皆を上手く騙せおおせていると思っているようだが、私がそのことを知らぬとでも思うたか? あまり私を見くびらないで欲しいものだ」
柳内官は低い声で決めつけると、反応を確かめるように誠恵の顔をじいっと見つめた。
嫌な眼だ。まるで心の奥底を見通すような強いまなざしに、誠恵は思わず視線を逸らす。
柳内官は確かに光宗にとっては必要不可欠な忠臣には違いないが、光宗を守り抜くためには、どこまでも冷酷になれるといった一面を持っている。
「そなたの望みは一体、何なのだ? 何が目的で王宮に紛れ込み、殿下のお心をかき乱すのだ?」
冷ややかに問われ、誠恵は淀むことなく、すらすらと応えた。
「復讐」
「ホホウ、その隙のない身のこなしは、ただ者ではないな。到底、一介の女官とは思えない。まるで、刺客のようだ」
意味ありげな笑みを浮かべる柳内官の貌は、夜目にも不気味で凄みがあった。
誠恵はキッとしたまなざしで柳内官を見つめた。
「何が仰りたいのですか?」
柳内官は余裕の表情で腕を組んだ。
「今、大妃殿は上へ下への大騒動だ。何しろ、世子邸下が何者かに首を絞められかけて、あわやご落命なさるところだったのだから」
無言を通す誠恵に、柳内官が誘いかけるように言った。
「張女官は世子邸下のお気に入りだったはずなのに、こんなところで薔薇見物などしていて良いのか? それとも、後ろ暗いところがあって、大妃殿には顔を出せないとでも?」
「柳内官! 言いたいことがあるのなら、はっきり言いなさい。私は殿下の恩寵を賜っている身です。無礼な態度は許しません」
胸をそらして言ってやると、柳内官は鼻を鳴らし、皮肉げに口の端を歪めた。実直な務めぶりで知られる柳内官でも、このような表情をするのかと内心、誠恵は愕いた。
「そなたは、殿下の寵愛を受けていない。殿下がそなたには甘いのを良いことに、皆を上手く騙せおおせていると思っているようだが、私がそのことを知らぬとでも思うたか? あまり私を見くびらないで欲しいものだ」
柳内官は低い声で決めつけると、反応を確かめるように誠恵の顔をじいっと見つめた。
嫌な眼だ。まるで心の奥底を見通すような強いまなざしに、誠恵は思わず視線を逸らす。
柳内官は確かに光宗にとっては必要不可欠な忠臣には違いないが、光宗を守り抜くためには、どこまでも冷酷になれるといった一面を持っている。
「そなたの望みは一体、何なのだ? 何が目的で王宮に紛れ込み、殿下のお心をかき乱すのだ?」
冷ややかに問われ、誠恵は淀むことなく、すらすらと応えた。
「復讐」
