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my destiny

第5章 風の中のキャンドル

【智side】

後から考えてみると、この時が分かれ道だったのかな、と思う。
この時までは、多分、普通にやれてた。

仕事はそれなりに忙しく、時々大変で、だけど面白かった。

毎日がちゃんと過ぎてて、自分がやるべきこともわかってた。

オイラは元々、目標とか、熱い情熱とか、やりたいこともあんまり無いけど。

それでも俺なりに、5人でどこまで続けられるか、やれるところまで一緒に行こう、って思ってたんだ。

その気持ちが嘘だったわけじゃない。
宝物、って思ってた。

今だって思ってる。

大切なのは変わらない。

だけど、握っていられなくなった。

大切なものを握っていた手は、ふと見ると人形みたいになってて。

それは確かに自分の手の筈なのに、触れているものの感触がない。

そんな感じ。





ああ、海の匂いがしてる。

遠くで波の音もする。

オイラは風に髪をなびかせながら、白い階段を、また、一歩一歩、昇っていく。

頂上に着いたと思ったら、やっぱりそこは海じゃなかった。

ドラマのセットだ。

お迎えに上がりました、ってやつ。


「もっと緩やかに受け止めるようにサポートしたかったのに」


柄シャツにサスペンダー姿の神様が言った。






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