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my destiny

第5章 風の中のキャンドル

【智side】

翔君のドラマのプロモーションが始まった。
朝は翔君の方がオイラより早く出るし、帰りも翔君はオイラより遅い。

事前に分かっていたことだし、仕事だ。

最低でも週に一度は、5人の収録で会える。

最近、夜眠るのが、嫌になってきた。
眠ると朝が来るから。

朝が来たら、出掛けなくちゃいけない。
ライトが眩しくて、人が沢山居る場所へ。

この頃、眠ると何か夢を見る。
けど、憶えてない。

何となくの雰囲気しか残っていないんだけど。
多分、あんまり良い夢じゃない気がする。

だから、余計に眠りたくない。

帰宅して、一人で過ごす夜の時間。

寝ては駄目だ、と思いながら、ソファに居るとついビールとか飲んじゃって。

怠くて、体を横にするとウトウトと眠ってしまう。

翔君が帰って来て、声を掛けてくれるから、そこで意識が戻る。

二言三言話して、先にベッドへ入るけど。
眠りたくないから体を小さく丸めて、目を閉じていても寝ないように、自分に言い聞かせる。

しばらくすると翔君がベッドに入ってくるから、鼾が聞こえるまで寝たふりをして。

それから静かに起き上がって。

枕もとにある時計の秒針の音を聞きながら、暗闇でぼんやり判る翔君の寝顔を見たりしてた。

そうすると、いつも。

自分には、もう、この人にあげられるものが何もないような気がした。







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