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my destiny

第6章 Pray

【翔side】

壊れる前に、現在の場所から少し離れて休む、って選択肢もあるんだ、って伝えたくて。

まともに話しても聴いてもらえないから、貴方を 抱 き ながら「逃げよう」と言った。

解ってるんだ。

貴方がステージから離れられる筈がない。

自分への賞賛は全く望まない人だけど、ファンの子、一人一人の顔まで憶えてる貴方が、この仕事から逃げるわけがない。

曲の世界と完全に同化して。
何の虚栄心もなく無心に踊って。

聴く者の、心の奥の奥まで、真っ直ぐに声を届かせる貴方が、表現することから身を引く筈がない。





想像して見たら、何となくわかった気がする。
何が、貴方を衰弱させたのか。

豊か過ぎる感受性を持つ貴方は、仕事上の雑音から身を守る為に、時にスイッチをOFFにして自分を守って来た。

他人の言動で心が傷つくような場面でも、不自由さに魂が悲鳴を上げたくなるような時期が続いても、貴方は今までそうしてやり過ごしてきたんでしょう?

だけど、あれ以来、絵筆を持つことが少なくなって、本来の自分に戻る術を無くしてしまったのかもしれないと思ったよ。

それで、抱えきれなくなったんじゃないの…?





俺に、何が出来るだろう。

考えても、考えても。

愛おし過ぎて気持ちばかり溢れて来て。

今も、俺の下で、ただ 感 じ て 体 を 捩 る 貴方を見下ろしながら、どうしようもなく愛しいばかりで。

いくら考えても貴方の為に出来ることを思いつけない。
最早、祈るしかないようにも思えてくる。

せめて俺も、一緒に苦しむから。

自分から一人になろうとしないで。





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