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my destiny

第11章 宮城へ

【翔side】

衝撃的なメールを読んだ後、智君はまず眉間に皺を寄せた。
それから、額まで右手を持って来ると、何度か「検索」をする。

ど、どーすんだろ…。

俺は思わず黙って見守る。
大宮を過ぎた新幹線は仙台までノンストップだ。
どの道、降りることは出来ない。

「翔君、俺、寝てもいい?」

どうやら検索結果は0件だったらしい。
智君は俺が返事をするよりも早く、膝にかけていたコートを胸まで引き上げる。
目を閉じたと思ったら、あっと言う間に寝息を立てた。

可愛い寝顔を少しの間眺めて。
タブレットで新しい振りの確認をしているうちに、トンネルをくぐる間隔が短くなっていく。
仙台に到着した時には、まだ世の中は8時を回ったばかりだった。

寒い!と震える程ではないが、季節外れのクーラーが稼働してるみたいに、空気がひんやりしている。
東京はまだ秋の装いだが、こちらでは既にマフラーを巻いてコートを着ている人が沢山居た。



身動きもせずに眠っていた智君は、目覚めてからテンションがすっかり下がってて可哀相なくらいで。
それでもボンちゃんの奥さんを案じているのか、せっかく来たのに、みたいなことは一言も漏らさない。

今朝は二人ともコーヒーだけだったから、俺達は取り敢えず駅の中にある立ち蕎麦屋に入った。

今回、レンタカーの手配でサンドのお二人にお世話になったんだけど、その時に、在来線の中央改札口の脇にある立ち蕎麦屋の肉蕎麦が美味いよ、って教わって。

地方にある大きな駅で二人でこういうことをするのも面白いかな、と思って、寝呆けている智君を促して歩く。

店内は出勤前に蕎麦を引っかけるサラリーマンが一杯で、案の定、誰も俺達二人には注意を払わない。

お客さんの中に真っ赤なコートを着たキレイ系の女性が一人居て、ハイヒールのまま姿勢良く立ち、実に見事な箸捌きで蕎麦を手繰っていた。
ルージュを引いた唇がすぼまって、蕎麦を冷ますのに息を吹きかける表情が、店内の視線を独り占めしている。

俺はその女性本人よりも、彼女をチラチラ盗み見ている男性客の方が面白かった。
智君も気がついて、唇だけを可笑しそうに緩ませる。

翔君、あれ!
って、寝ぼけてた目を急にくりくりさせて視線を寄越すから。

見た見た!
って、俺も無言のまま目で笑って返事をした。
ふふっ、面白い。




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