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甘い鎖 ~アイツの愛という名の鎖に、縛られ続けたオレは……~

第3章 二人、外では…

駅前はかなり発展している。

そんな場所にこんな大きな店が作れるほど、繁盛していたのか。

まあ二人ともすでに事務所に住居があるし、マンションには週に一度でも帰ってくればマシな方。

この放任主義、案外光雅のせいとも言えるかもしれない…。

「オープンして間もないけど、今の時間帯なら落ち着いているみたいだな」

「…ああ」

笑顔の光雅の後ろを、重い足取りでついて行く。

できることなら、今すぐにでも帰りたい。

しかし運動神経抜群の光雅に捕まり、引き戻される可能性は圧倒的に高い。

絶望的な賭けをするほど、オレは無謀じゃなかった。

店内に入ると、店員達の視線が一気に光雅に集まる。

一瞬の間を置いて、すぐに店員達は光雅の元へ駆け寄ってきた。

なのでオレはすぐに光雅から離れ、壁に背を付けた。

あのまま側にいたら、確実に弾き飛ばされただろう。

…過去にそういうことが、実際にあった。

だから経験を重ねているうちに、オレの条件反射はかなり鋭くなった。

「いらっしゃいませ、お客様!」

「本日は何をお求めですか?」

「現在、オープニングサービス中でして…」

うわぁ…。

老若男女、ワラワラとよくもまあ集まれるものだ。

学院ですでに見慣れた光景とは言え、違う場所で見ると、改めて引く。

ここは羨ましいとは絶対に思えない。

「おや、光雅くん、いらっしゃい」

「光雅くん、来てくれたのね!」

そこへ、オレの憂鬱な気持ちの原因がやって来た。

「こんにちは、おじさん、おばさん。繁盛しているようで、何よりですね」

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