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甘い鎖 ~アイツの愛という名の鎖に、縛られ続けたオレは……~

第1章 オレとアイツの日常 /学校生活

「だからいつもボクが選んで買ってあげているだろう? 今度の食事会で、困るのは綾の方だ」

「うぐぐっ」

食事会と言うのは月に一度、ウチの家族と光雅の家族で行う。

どこで何を食べるかは親達が決めて、オレと光雅は前日知ることになる。

そして普段家に滅多にいないオレの両親は、たまに会うと服装について困り顔になる。

仕事が多忙でロクに家にいないクセに、こういう時だけ親の顔になるのは、正直言ってムカつく。

…まあ自分達がアパレル関係で働いているのに、一人息子のオレが無関心では、立つ瀬がないというヤツだろう。

「駅前にご両親のお店が出来ただろう? そこで服を買って着れば、喜んでもらえるぞ?」

「駅前に出来たんだ」

初耳のことに、目が丸くなる。

「知らなかったのか? メール、来てなかったか?」

慌てて携帯電話を取り出し、確認するも…。

「…来てねぇよ」

あんのバカ親っ! 

いつものことだが、何で一人息子のオレに連絡を寄越さず、光雅にばっかするんだ?

「まあ忙しいみたいだしな。今日行けば、顔を合わせられるかもしれないぞ」

「ぜってーイヤだ」

「まあまあ。とにかくボクはちょっと用事があって遅くなるけど、教室で待っててくれ」

と言うが、オレに拒否権はない。

「…分かったよ」

だからこう答えるしかない。

光雅は満足そうに頷き、空の食器を片付け始めた。

そして二人そろって登校する。

マンションから学院まで、歩いて十分。

しかし途中で、同じ学院の生徒達は光雅を見ては歩みを止め、頭を下げて挨拶をする。

「おはようございます、会長」

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