明日への扉 ~~ 伝えたい気持ち
第5章 バイト先・其の弍 ”フードエキスプレス”にて
その頃柊二は幾つかの債権の取立てを終え、
ファイナンス部門での本日最後の仕事を片付け、
渋谷に構える本社へ戻る途中の公用車の中にいた。
宇佐見悠里に出逢ってからというもの、
街で同年代の娘を見かけただけで
無意識にその姿を目で追ってしまう。
”――――ったく、俺としたこが……
相手はまだケツも青い子供だぞ、
それに、まだ大人の男と女の付き合い方すら
知らない……”
「―― 社長、予定通りこのまま社の方で
宜しいですね?」
運転中の部下・浜尾が聞いてきた。
「あぁ ―― イヤ、いつものカフェに
寄ってもらおうか。ひと休みして来る。
お前は予定通り上がっていいからな」
「はい、畏まりました」
★★★ ★★★ ★★★
浜尾運転の柊二を乗せた車が路肩へ寄って
ゆっくり停止した。
その車内から「お疲れさん」と、声がして
後部座席の開いたドアから
柊二が降り立った。
そこは、原宿・表参道・青山通にも接している
分岐点のすぐ近くで、
辺りには若者向けのカフェ・ブティック・
美容サロン・レストラン等の洒落た店が
ひしめき合うよう建ち並んでいる。
柊二が先ほど車内で浜尾に言っていた
” いつもの店 ” とは、
カフェの事で、挽きたての芳ばしいコーヒー豆から
サイフォン式でドリップした、
この店のスペシャルブレンドが今イチバンの
お気に入りなのだ。
そして、最近になってこの店へ足を運ぶ回数が
増えた理由はもうひとつ ――