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明日への扉 ~~ 伝えたい気持ち

第5章 バイト先・其の弍 ”フードエキスプレス”にて


「―― ご新規、二組入りました。あと、
 9番さん ――」


『あ、あの ―― おトイレは何処ですか?』


「はい、こちらを奥へ進んだ突き当りになります」


「ユーリっ。8番さんの生春巻きあがってるから
 運んで」


 彼は厨房チーフの鮫島 皇紀(さめじま こうき)
 さん。
 左門さんとは恋人同士で、この店と同じビルの
 上階にあるシェアハウスで同棲中。


「オッケー、コレね。持って行きます」

「ごめん、宜しく」


 ”ちょっとぉ~! さっきのまだですかぁ?”


「はいぃ、もう少々お待ち下さいませー」


 ”ちゃんと、しないと”
 自分に言い聞かせるよう心の中で呟き、
 仕事を続ける。

 そこへ、電話で中座していた左門さんが
 やっとフロアへ戻って来た。


「お待たせぇ~、今すぐ入るからぁ」

「ちょっと左門さん、頼むよ~」

「ごめん ごめん。もし、俺達でどうしても手が
 足らないようだったら、羽柴さんが本店から
 ヘルプ回してくれるってから、もうひと踏ん張り
 だよ」


 ”羽柴さん”というのはこのお店のオーナーで、
 ここの他に4店舗のレストランと2店舗のネット
 カフェを経営している。


「(それ)にしても、今日は何だってこんなに
 人が多いんだよ~」

「んな事オレが知るか。文句は雨に言ってよ」

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