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明日への扉 ~~ 伝えたい気持ち

第5章 バイト先・其の弍 ”フードエキスプレス”にて


 ”―― えっと、*番テーブルのオーダーは……”

 近くに差し掛かった7番テーブルのお客様に
 呼び止められた。


「悪い。ちょっといいかな」

「はい、何でしょう」

「……キミ、何か気付かない?」

「は? なにか、と……」


 そう言われて考え、一瞬の後ハッとした。


「ガパオライス、ちょっと急いでくれる?」

「は、はいっ。申し訳御座いません。
 すぐ、お持ち致します」


 ”しまったぁ ―― すっかり忘れてた”

 厨房カウンターへ戻る道すがら、客席に座る
 愛実の冷たい視線とぶつかった。


「何にも変わってないのね、悠里」


 皮肉たっぷりに言われた。

 さっきまでは英語で喋ってたのに、
 わざわざ急に日本語で言ったのは私への当て付けだ

 悔しいけど、何も言い返せなかった。



「―― あぁっ? ガパオライスの注文忘れてた
 って?」

「すみません」

「すみません、って言ってもな。もう、ひき肉は
 合い挽きも牛もトリも使い切っちゃったし、
 参ったなぁ……あ、左門さん! ちょっといい?」

「んー? 2人で難しい顔取っ付きあわせて
 どうしたの?」

「ガパオライス切れてるんだけど、ひとつ、
 受けちゃってるんだよねぇ」

「えっ、受けたのはだぁれ?」

「それがユーリなんだけど、相当お待たせしてる
 みたいなんだ」


 ”ど、どうしよう ―― 私のせいで皆んなに迷惑
  かけて……!”


「―― オッケー、分かった。俺がお詫びしてくる。
 ユーリは代わりにカウンター入って」

「は、い――あ、あの! すみませんでした、
 左門さん」

「ドンマイ。けど、次からは気を付けてね」


 と、左門さんは問題の”ガパオライス”を注文した
 7番テーブルのお客様へお詫びに行ってくれた。

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