たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第9章 杉並実果留・特別編
壁時計をチラッと見る。
うぅー、あと20分で出ないと電車に乗り遅れちゃうよー!
って、このセリフも、何年言わせるつもりなのよーっ!
「たぁけぇるぅー! 早く起きてよぉー!」
切羽詰まった私は、ベッドに飛び上がり、武の両手首を掴み、力いっぱい引っ張り起こした。
「んあぁー、何すんだよぉー……」
やっと起こしても、武はベッドの上で座ったままゆらゆら。昔からずーっと起こされ続けているのに、未だに寝ぼけていられるなんて、逆に感心してきちゃう。
この特技……何かに生かせないもんかなぁ?
「……んん?」
目が半開きの武は、私の方を見て何かを見つけたように唸った。
「え? 何?」
「んんー? これは……」
「え、ちょっ、ちょっと、武?」
武は前に手をついて、私にずいっと寄ってきた。私は少し逃げ腰になり、後ろにのけ反った。
こ、この展開は、まさかっ――
案の定、武が両手でムギュッと掴んだのは、
「っ!」
私の……胸。
「なっ……ちょっ……」
「はぁー気持ちいいー。朝の目覚めはコレに限るぜー」
と、更にムギュムギュ。
「なっ……なっ……」
「なぁ実果留。今日はサボってさぁ、このまま二人でイチャイチャしよーぜー」
……そのハッキリとした口調でわかる。
コレ、絶対寝ぼけてない。確信犯だしっ!
「フザけてないで……とっとと準備しろぉーーっ!!」
バッシーーン!
「んだぁっ!」
私から強烈なビンタを食らった武は横に倒れかかると、そのままベッドから、ドシン……! と、大きな音をたてて落ちた。