たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第3章 杉並実果留
「……じゃあ武ママ、お邪魔しましたっ」
焦る気持ちを抑えながら、私は玄関先でローファーに履き替えた。
「実果留ちゃん、ごめんねー。せっかく来てくれたのに、武が全然起きなくて……」
「い、いいのっ。また来るから。じゃっ」
挨拶をそこそこにし、武の家から出たと同時に隣の自分の家へダッシュした。
「はぁっ……はぁっ……」
勢いよく家の玄関に駆け込み「ただいまぁっ」と、奥に向かって声をかけた。
すると、一階奥の書斎からママが出迎えてきた。
「あっれぇー? 実果留ー、あんたもう帰ってきたのぉ? まだ5時過ぎだけど?」
ママの問いかけにギクッと体を揺らした。それでも平静を装って、ローファーを脱いだ。
「き……今日は……中止になって……それで――」
「あっそう」
細かい言い訳をする前に、ママはそれ以上聞かずにアッサリと返した。ママのこういうところ、助かる時がある。
特に、今……。
さっきまでの武との『行為』を思い出すと、また身体がドクドクと騒ぎ出す。
「まさか帰ってくるとは思わなかったから、夕飯何にも用意してないけど……」
「大丈夫っ。あるのをテキトーに食べるしっ」
落ち着かないっ。ママに見抜かれたくないっ。
武とのことを……。
ママとロクに目を合わせられないまま、階段を上がりかけた。
「ちょい待ち、実果留」
「っ! なっ、何?」
ふいに呼ばれてビクッとした。
えっ……まさか、見抜かれた?
「……明日の夕方、パパが久々に帰ってくるからねん」
「あっ……そうなんだっ……」
単身赴任中のパパのことかぁ。はぁー、ビックリしたぁ……。
ママをチラッと伺うと、普段ではなかなか見られない、幸せそうな満面の笑みを浮かべてる。
「だから、明日もし出かけるんだったら、夕方までに帰ってきてよー? 二ヶ月ぶりに三人揃うんだからー」
「うん……わかった」
私はママの話を聞き終わると、そそくさと階段を駆け上がった。