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ツンデレのお嬢様は幽霊執事に夢中

第3章 過去

 そう、初音の手だ。

 結構男の手にしては細くて、少しだけ景色が透けているスーツの袖が見える。

『――全く』

 ?

 初音の声が聞こえた。
独り言かとも思ったが、どうやらそうでは無いらしい。なんとうなくわかる。

 本人が喋っている訳ではなく、心の声が、私にそのまま聞こえているのだと。

『的良様も趣味が悪い。この部屋――的良様の私物ばかりではありませんか』

 ――へぇ、そうなんだ。と思うもかなり疑問の多い心の声だった。

 ――なんで初音がおばあちゃんの私物とか知ってんの? そりゃお世話になったとは聞いたけどさ......どんだけ世話になったら私物とか把握出来るのよ。

 積み上げた本を見詰め、初音は懐かしそうに目を細め、そして表紙を撫でる。『――嗚呼、本当に懐かしい......』と呻くような声で心情が伝わった。

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