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sweet poison【BL】

第2章 失った恋人との再会

翌日の会議は滞りなく進んだ。

そして休憩の時に、水野から呼び出された。

「今度の週末に会う予定を入れました。向こうも了承済みです」

「そうですか」

「会社には出張としておきました。とりあえずまだこのお話は陽一さんとわたしだけのことにしておきたかったので…」

昨日と同じように会議室で、二人は話をしていた。

「良いですよ。他の人は多分、すぐに賛成するでしょうから」

世間の恐ろしさをあまり知らない人ばかりなので、こういう話にはすぐに飛びついてしまいそうだった。

「ははっ、申し訳ないです。それでS&Mまでもお供しますが、護衛役が何人か隠れてついてきます。何か異常があればすぐに動いてくれますから、ご安心ください」

「それは心強いですが…水野さん、護衛なんてどこで用意したんですか?」

「あはは」

笑って誤魔化すところを見ると、陽一には言えないところかららしい。

水野はとんでもないところに人脈を広げているらしく、特に情報の分野ではこんな田舎に引っ込んでいるのが勿体無いと思えるほどだった。

「とりあえずは一泊する予定です。新幹線もホテルもこっちで用意しました」

「こっちでと言うと…?」

「本当は向こうが用意してくれると言ってくれたんですけどね」

水野は苦笑した。

「さすがに契約前に気が引けますから」

「それに変に借りを作ったりしたくないですもんね」

「おっしゃる通りです」

二人は力強く頷きあった。

「ちなみに社長には伝えたんですか?」

「今日にでも思っています。一人息子の陽一さんを危険な所に行かせるわけですから、難しい顔をされるのは眼に見えていますが」

「…まあそんなに危険とは思いたくないですが」

そもそもこんな田舎の工場の社長の息子など、地位も金もないも同然なのだ。

「詳しいことは東京に着いてからご説明しますので、準備をお願いします」

「分かりました。父の説得、お願いします」

ここまで準備しといて、行かせないということはないだろうが…。

「でも陽一さん、東京に戻って…大丈夫ですか?」

「えっ?」

驚いて顔を上げると、水野は心配そうな表情を浮かべていた。

「東京は五年ぶりでしょう? …その、あの事件以来」

ズキッと胸に痛みが走った。

吐く息が熱くなるのを静かに抑え、陽一は笑みを作った。

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