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sweet poison【BL】

第5章 相対する二人の心

しかし羽月は腕を組み、考え込んだ。

「それは…違うね。ボクも疑った部分があったけど、そこは否定するよ。彼は本当に自分の意思だけで行動したんだ。…まあ陽介さんのお金のことに関して、薄々何かを感付いてはいたらしいけど」

「父さん、やっぱり金を貰っていたか…」

分かっていたこととはいえ、改めて聞くとショックだった。

両親はやはり、羽月の生存を知っていた。

けれどそれを言わないようにと、羽月の父親から口止め料を貰っていたのだろう。

「陽介さん達は多分、その方が良いと思ったんだろうね」

「オレ達がまた心中しないよう、と思ってか」

お互い生きていることを知ったら、再び心中するかもしれないと思ったのだろう。

それを防ぐ為に、あえてウソを告げたのか。

「まあ言い出したのはボクの父さんだろう。お金でボクを売ること自体、あの人らしいや」

笑顔は五年前とあまり変わらないのに、心の中は暗い闇に囚われているようだ。

この五年間、陽一は周囲の人達のおかげもあって、何とか立ち直れた。

羽月のことを愛していたものの、裏切られた気持ちの方が強くて、生きている可能性があっても再会を望むことはできなかった。

けれどこうして会って見て、気付かされることもある。

五年前のあの時、確かに死にたくはなかった。

だが羽月の手にかかって、一緒に逝くなら…という気持ちもなかったわけではない。

そのぐらい、羽月を愛していた。

こんな狂気を持つぐらい愛されていることを実感したら、恐怖と共に優越感を感じてしまった。

それはあの薬を飲んだ時以上に、身も心も震えることだった。
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