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sweet poison【BL】

第3章 絶望の中の行為

「…そうだな」

「でも頑張って抵抗してくれている。クビになりそうなのに、庇ってくれているね」

「父さんは羽月をもう一人の息子だって、いつも言っている。その息子を庇って守ってやらなかった男に、渡すつもりはないってさ」

「カッコ良いね。さすが陽一のお父さん」

くすっと笑い、羽月は立ち上がった。

「羽月?」

「あったかい飲み物でも飲もう。紅茶で良い?」

「うん…」

羽月は自分のカバンを引き寄せた。

荷物の中に紙コップと紅茶のティーバッグ、それにお湯を入れた魔法瓶を持ってきたのだ。

「そのティーバッグ、羽月特製のか?」

「うん。まさかティーセットを持ってくるわけにはいかなかったからね」

そう言って苦笑する羽月は、いつもの彼の姿だった。

―だからこそ、油断してしまったのかもしれない。

羽月は母親共々紅茶が好きで、自分で好きなブレンドを作れるほどだった。

陽一もいつも飲ませてもらっていて、羽月のブレンドを一番好んで飲んでいた。

「はい、どうぞ。ちょっと熱いから、気をつけてね」

「ああ、ありがとう」

受け取ると、じんわり紅茶の温かさが伝わってきて、思わず泣きそうになった。

ここ数日、不安でしょうがなかった。

父親が仕事をクビになるかもしれないこと。

そのことを気にしている母親。

大学進学も諦めなければならないかもしれないことも。

そして遠くへ行ってしまい、二度と自分の前には現れないかもしれない恋人のことを考えると、眠れない日々は過ぎていった。

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