sweet poison【BL】
第3章 絶望の中の行為
「…なぁ、今日はここに泊まるのか?」
「まあ…そうだね。この雪じゃ、戻るの大変そうだし」
ボロボロのカーテンの隙間からは、白い雪が音もなく降り続いていた。
「寒いよね。ちょっと待ってて」
羽月は部屋の奥へ行くと、数本の薪を手にして戻って来た。
薪を囲炉裏に入れて、手馴れた仕種で火をつけた。
その様子を見て、陽一は眼を丸くした。
「薪なんてこの家にあったのか?」
「うん。でも大分前のだからしけっているし、あんまり燃えないかも」
そう言いながらも薪と一緒に持ってきた古びた雑誌や新聞を丸めては、ライターで火をつけ、囲炉裏に入れていく。
「羽月、何でそんな手馴れているんだ?」
「…ちょうど今みたいな時期に、母さんとここで暮らしていたんだ。父さんや…正妻から逃げる為に」
スゥッと羽月の眼に暗い光が宿った。
陽一の母に頼るまで、二人は各地を転々として暮らしてきた。
その間、羽月は学校にも行けず、食事や寝床もままならなかったらしい。
「…そっか」
「おばさんには随分甘えちゃったよね。おかげで今、迷惑かけてる」
パチパチっと火が踊る様子を、二人でぼんやり見ていた。
「羽月、正直に言ってほしい」
「…なに?」
「親父さんから、逃げられないんだろう?」
「………」
沈黙は肯定の証。
いつも笑っている羽月が無表情なのも、それを強く暗示していた。
「父さんは陽一のお父さんに、圧力をかけているみたいだね」
「まあ…そうだね。この雪じゃ、戻るの大変そうだし」
ボロボロのカーテンの隙間からは、白い雪が音もなく降り続いていた。
「寒いよね。ちょっと待ってて」
羽月は部屋の奥へ行くと、数本の薪を手にして戻って来た。
薪を囲炉裏に入れて、手馴れた仕種で火をつけた。
その様子を見て、陽一は眼を丸くした。
「薪なんてこの家にあったのか?」
「うん。でも大分前のだからしけっているし、あんまり燃えないかも」
そう言いながらも薪と一緒に持ってきた古びた雑誌や新聞を丸めては、ライターで火をつけ、囲炉裏に入れていく。
「羽月、何でそんな手馴れているんだ?」
「…ちょうど今みたいな時期に、母さんとここで暮らしていたんだ。父さんや…正妻から逃げる為に」
スゥッと羽月の眼に暗い光が宿った。
陽一の母に頼るまで、二人は各地を転々として暮らしてきた。
その間、羽月は学校にも行けず、食事や寝床もままならなかったらしい。
「…そっか」
「おばさんには随分甘えちゃったよね。おかげで今、迷惑かけてる」
パチパチっと火が踊る様子を、二人でぼんやり見ていた。
「羽月、正直に言ってほしい」
「…なに?」
「親父さんから、逃げられないんだろう?」
「………」
沈黙は肯定の証。
いつも笑っている羽月が無表情なのも、それを強く暗示していた。
「父さんは陽一のお父さんに、圧力をかけているみたいだね」