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sweet poison【BL】

第5章 相対する二人の心

「んっ…。今日は泊まっていきなよ。ボクの部屋でも、ホテルでも良いから」

「あっ」

そこで陽一は、ようやく水野のことを思い出した。

確か二時間以上連絡がなかった場合は…というところまで思い出し、慌てて携帯電話を取り出した。

時間を確認すると、一気に現実に戻された。

「わっ! 羽月、ちょっとゴメン。電話かけさせて」

「えっ、うん」

約束の二時間まで、あと三分だった。

羽月が腕を離してくれたので、壁際に向かった。

慌てて水野に電話をかけると、もう少しで行動に出るつもりだったらしいことを聞いて、血の気が下がった。

それで担当者が昔の知り合いだったことを告げて、今夜は彼の所へ泊まると言った。

水野は心配していたが、契約が上手くいきそうだと伝えると嬉しそうになった。

電話を切り、深くため息をついた。

水野は羽月のことをあまりよく知らない。

陽介も詳しいことは教えていないだろう。

しかしここで羽月の名前を出すわけにはいかなかった。

五年前の事件のことは、水野の耳にも入っていたのだから。

「…あっ、そうだ。ずっと疑問に思っていたことがあったんだけど」

「何? 陽一」

「水野さんって、お前の親父さんの仕込みなのか?」

五年前のあの時、独立の話を持ちかけてきたと聞いた時は、あまりにタイミングが良過ぎだと思った。

だから考えていた。

もしかしたら水野は羽月の父親の指示で、動いているのではないかと。

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