sweet poison【BL】
第5章 相対する二人の心
「そして次は住んでいる家、そしてご両親かな?」
「羽月っ! やめろっ、言うなっ!」
耳を塞ぎたかったが、両腕とも捕まれていて動けなかった。
「何だったら土地ごと潰すよ? そうすれば陽一は帰る所も、働く場所もなくなるだろう?」
「それじゃあ…お前の親父がやったことと同じだろうがっ!」
陽一は言いたくなかった言葉を叫んでいた。
羽月の体がびくっと大きく震える。
背中から伝わる鼓動が、一気に早くなった。
「親父さんはお前の母親を手に入れる手段として、そうやって金と権力を使ったんだろう? お前も同じことをするのか? そしてお前と同じ苦しみを、オレに味あわせるのかよ?」
「…そうだよ」
羽月が搾り出すように出た言葉は、背筋がぞっとするほど冷たかった。
「陽一を手に入れる為なら、何だってする。だってボクの父親は、欲しいものの為なら手段を選ばない人だからね」
「羽月…」
「だからお願い、陽一。ボクにそんなことをさせないで。ボクだってやりたくないんだよ」
力なく言って、羽月は陽一の首筋に顔を埋めた。
「父と同じ人間になんてなりたくない。けれど…陽一のことだけは別。どんな手段を使ったって良いとすら思えるぐらい、好きなんだ」
「…愛しているのはオレだって同じだ」
「うん…知ってる。だから側にいて。ボクをキミが好きなままの人間でいさせて」
脅迫めいた言葉のはずなのに、傷付いているのは羽月の方だった。
陽一は一度強く眼を閉じた後、ゆっくりと瞼を上げた。
顔を横に向ければ、五年前と変わらずふんわりとした笑みを浮かべる、最悪で最愛の人がいる。
「本当にもう、オレを殺そうと思わないか?」
「今度は前以て言うよ」
「…やっぱり殺意はあるのか」
「陽一が他の人間に興味を持たなければいいよ。ボクだけを見てくれればいい」
つまり浮気をしなければ、命は取らないということか。
「相変わらず恐ろしいヤツ」
「うん、怖いんだよボク。自分でもそう思う」
悲しそうに眼を伏せる羽月に、自らキスをした。
「羽月っ! やめろっ、言うなっ!」
耳を塞ぎたかったが、両腕とも捕まれていて動けなかった。
「何だったら土地ごと潰すよ? そうすれば陽一は帰る所も、働く場所もなくなるだろう?」
「それじゃあ…お前の親父がやったことと同じだろうがっ!」
陽一は言いたくなかった言葉を叫んでいた。
羽月の体がびくっと大きく震える。
背中から伝わる鼓動が、一気に早くなった。
「親父さんはお前の母親を手に入れる手段として、そうやって金と権力を使ったんだろう? お前も同じことをするのか? そしてお前と同じ苦しみを、オレに味あわせるのかよ?」
「…そうだよ」
羽月が搾り出すように出た言葉は、背筋がぞっとするほど冷たかった。
「陽一を手に入れる為なら、何だってする。だってボクの父親は、欲しいものの為なら手段を選ばない人だからね」
「羽月…」
「だからお願い、陽一。ボクにそんなことをさせないで。ボクだってやりたくないんだよ」
力なく言って、羽月は陽一の首筋に顔を埋めた。
「父と同じ人間になんてなりたくない。けれど…陽一のことだけは別。どんな手段を使ったって良いとすら思えるぐらい、好きなんだ」
「…愛しているのはオレだって同じだ」
「うん…知ってる。だから側にいて。ボクをキミが好きなままの人間でいさせて」
脅迫めいた言葉のはずなのに、傷付いているのは羽月の方だった。
陽一は一度強く眼を閉じた後、ゆっくりと瞼を上げた。
顔を横に向ければ、五年前と変わらずふんわりとした笑みを浮かべる、最悪で最愛の人がいる。
「本当にもう、オレを殺そうと思わないか?」
「今度は前以て言うよ」
「…やっぱり殺意はあるのか」
「陽一が他の人間に興味を持たなければいいよ。ボクだけを見てくれればいい」
つまり浮気をしなければ、命は取らないということか。
「相変わらず恐ろしいヤツ」
「うん、怖いんだよボク。自分でもそう思う」
悲しそうに眼を伏せる羽月に、自らキスをした。