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ヌードモデルと感謝の形

第1章 感謝します


台所で水を飲むともっと気分が良くなった。

モデル事務所の親睦会で少し飲みすぎた。
そこまではなんとかなったが、帰りのタクシーで気分が急に悪くなった。
車内を汚す前に知っている公園の横で降りて、トイレに駆け込んで、嘔吐──みっともないな。いい歳をして。

でも、気分は軽くなった。
歩いて無事にアパートに帰りついたのだが──

「ご親切にありがとうございました」

玄関にいる男性に、電車のひと駅の間、付き添って歩いてくれた「菊池さん」に、お礼を言った。

玄関の中には入っているものの、靴も脱いでいない菊池さんはどこにでもいるようなサラリーマンだ。
ただ、眼鏡を外すと意外とイケメンかもしれない。

もう大丈夫ですねと言って、ドアを開ける菊池さん──判断は一瞬だった。

私はわざと床に崩れ落ちた。
彼は背を向けていたから、下手な演技でもバレなかった。

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