兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第3章 次男のオモテは裏…らしい
鶫side
「鶫くん、ちょっといい〜?」
トントン、ノックしながら部屋に入ってきた悠。
人にはノックしながら入るなって言うくせに~!
もしオレが息子と仲良くしてたらどうすんだよっ!
…って言いかけてやめる。
こんなこと言ったらまた怒らせちゃうから☆
「いいよ~なにー?」
「ここの問題教えて欲しいんだけど、」
「お、どれどれー?」
学校に行かなくなってから数ヶ月。勉強したくなくて行かないのかな、とか思ってたけど悠は違うみたいで。むしろ前よりこうして聞きに来ることが多くなった。
「あ~これは、こっちの公式を入れて解くとスムーズだよ。あと、ここ。x代入してるのに、解がyになってる」
「そっか、だからこんがらがってたんだ。yはケアレスミス…」
"ちょっとここでやってく"と、先日鬼の顔をした悠にケツを叩かれながら、なんとか片付けた机でノートに書き込む悠。やけに熱心・・・。
「ねぇ、ハルル」
「んー?」
「なんかあったの」
こうやって悠がひとつの事にヤケにのめり込む時は何かあった時。主に心の整理をつけたい時だ。
悠は天邪鬼で意地っ張りだからね。
聞いてやんなきゃ、自分からは絶対言わないし。
「・・・明日さ、あの人のとこ、行く」
あの人、それは悠の産みの母のことだ。
悠には、月に1度程度彼女に会うという決まり事がある。それは、小さい頃からずっと。
「鶫くん、俺・・・行きたくない…」
「どしたの、いつもそんなこと言わないじゃん」
「・・・だって、なんかもう嫌だ…」
曖昧な言葉。
いつだってはっきり意見を言える悠らしくない。
よっぽど心がグチャグチャなのか。
「父ちゃんと母さんに相談してみる?どうしても会いたくないならきちんと、そう伝えなきゃ」
ふるふる、小さく首を振ってそのまま俯くと、黙ってしまう。やっぱりオレじゃ兄貴みたいには出来ないや。
「悠。兄貴には言ったの?」
「いって、ない。智にぃには、言えないょ…。
だってさ、智にぃはほんとのご両親にはどうやったって会えないんだよ。連絡すれば会える俺が我儘言えない」
また、余計なこと考えてる。
兄貴はそんなこと気にしないのに、弟が困ってたら苦しんでいたら全力で助けてくれる人なのに。