兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第3章 次男のオモテは裏…らしい
「実の母親に育てられたオレがさ、言えることじゃないんだけどね。兄さんは気にしてないと思うよ。だって、兄さん、自分の両親は今の父ちゃんと母ちゃんだって言ってたから」
本当に幼い頃、産みの母親を亡くした兄さんはずっと父親と暮らしていたそうだ。
しかし、5歳の時にその父親さえも亡くした。
父ちゃんは兄さんの親父さんの後輩で。身寄りのない兄さんを養子として引き取ってくれたらしい。
それから父ちゃんはシングルマザーだった母ちゃんと結婚し、オレと兄さんは兄弟になった。
だから兄さんはこの家の誰とも血が繋がってない。
悠はこのことをずっと心の片隅で気にしていたんだろう。
「…智にぃに相談してみてもいいかなぁ」
ぽつり。
小さな消え入りそうな声で悠はそう言った。
「いいんじゃんない?ほら、兄さんはああいう性格だからさ。ハルルに遠慮される方が嫌がると思うよ?」
「ん…時間ある時にでも話してみる」
まだ未熟で小さくて簡単に壊れてしまう様な心でずっとずっと何かと戦う悠。
その負担が少しでも小さくなればいいな。
「鶫くん、ありがと」
そしていつか、
笑い話として今の自分たちを語れる日が来ることを
オレはひとり、静かに願うのだ。
悠が出ていった扉を見つめながら、回転椅子を揺らす。こうすると頭が整理されていく感覚がする。所謂昔からの癖だ。
~♪~♪~~♬︎
聞き慣れた着信音。
画面にはクラスメイトの名前。
「…もっしもーし?なに、どしたの?」
そして、いつものオレ。
「まじか!じゃあ明日はカラオケコースてこと?」
「オッケーオッケー!んじゃまた明日学校で!」
通話の切れた音が鳴る。口から零れたのは、ため息だった。
こういうオレが嫌いじゃない。
むしろ、沢山の人に愛される自分だから好きだ。
だけど、やけに、疲れる。